米国改正特許法逐条解説(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国改正特許法逐条解説(第2回)

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米国改正特許法逐条解説(第2回)

~第1回 先発明主義から先願主義へ~

河野特許事務所 2011年11月25日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

(ii)米国特許法第102条(b) グレースピリオド

改正前

改正後

(b) その発明が,合衆国における特許出願日前1 年より前に,合衆国若しくは外国において特許を受けた若しくは刊行物に記載されたか,又は合衆国において公然実施若しくは販売された場合

(b) 例外

(1) クレーム発明の有効出願日前1年以内の開示

有効出願日前1年以内の開示は、以下の場合102(a)(1)における先行技術に該当しない

 (A)開示が発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人によりなされた場合;または

 (B)開示された主題がそのような開示前に、発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人により公衆に開示された場合。

(2) 出願及び特許中の開示

開示は以下の場合、102(a)(2)における先行技術に該当しない

 (A) 開示された主題が、直接的又は間接的に発明者又は共同発明者から得られた場合;

 (B)開示された主題が、そのような主題が有効に102(a)(2)の規定に基づき出願される前に、発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人により公衆に開示された場合;又は

 (C)開示された主題及びクレームされた発明が、クレーム発明の有効出願日前に、同一人に所有されるか、または、同一人に譲渡する義務がある場合。

 米国特許法第102条(b)は所謂グレースピリオドについて規定しており有効出願日前1年以内の開示行為によっては新規性を喪失しない旨規定している。改正前は「合衆国若しくは外国において特許を受けた若しくは刊行物に記載されたか,又は合衆国において公然実施若しくは販売」と規定されていたが、改正後はあらゆる「開示」行為を含むようになった。

 

(iii)米国特許法第102条(d) ヒルマードクトリンの廃止

改正前

改正後

(e) その発明が,次に掲げるものに記載されていた場合

(1) 当該特許出願人による発明の前に合衆国において他人によって提出され,第122 条(b)に基づいて公開された特許出願,又は

(2) 当該特許出願人による発明の前に合衆国において他人によって提出された特許出願に対して付与された特許。ただし,第351 条(a)において定義される条約に基づいて提出された国際出願は,当該出願が合衆国を指定国としており,同条約第21 条(2)に基づいて英語によって公開された場合に限り,本項の適用上,合衆国において提出された出願の効果を有するものとする。

 

(d)  先行技術として有効な特許及び公開された刊行物

特許または特許出願が、米国特許法第102(a)(2)の規定に基づきクレームされた発明に対する先行技術であるか否かを決定することを目的として、そのような特許または出願は、当該特許または出願に記述されたいかなる主題に対しても、有効に出願されたと見なされる

 (1)特許または出願の実際の出願日現在で、パラグラフ(2)が適用されない場合;又は、

 (2)主題を開示している最先出願の出願日現在で、一又は複数の先の特許出願に基づき、特許又は出願が米国特許法第119(先の出願日の利益;優先権)365(a)若しくは365(b)(優先権;先の出願に係る出願日の利益)に基づき優先権を主張する場合、又は、米国特許法第120(合衆国における先の出願日の利益),121(分割出願)若しくは365(c) (優先権;先の出願に係る出願日の利益)の規定に基づき先の出願日の利益を主張する場合

 

 改正法第102条(d)は拡大先願の地位を有する出願を明確に定義し、所謂ヒルマードクトリンとよばれる問題を解決した。ヒルマードクトリンは、Hilmer事件[1]において形成された後願排除効に関する論理である。Hilmer事件において、出願人は、ドイツに第1国特許出願し、第1国特許出願に基づく優先権を主張して、米国に特許出願を行った。この際、後願排除効を有する日が、第1国特許出願日であるのか、米国の特許出願日であるのかが争点となった。

 

 Hilmer事件において原告は、米国特許法第119条(a)[2]に「外国出願がされた最先の日から12 月以内に提出されることを条件として,同一の発明に関する特許出願が前記の外国において最初に提出された日に合衆国において提出された同一出願の場合と同じ効果を有する」と規定されていることを根拠に、後願排除効発生日も第1国特許出願日であると主張した。

 

 これに対しCAFCの前身であるCCPAは、米国特許法第102条(e)は、「合衆国において・・提出された特許出願」と規定していることから、合衆国外で提出された外国出願は適用対象外であり、パリ条約優先権を伴う米国出願の後願排除効日は、米国出願日であると判示した。

 

 今回の特許法第102条(d)の改正により、

先願の米国特許若しくは公開特許の明細書が、後願のクレームに関連する開示を含んでいる場合、又は、

優先権主張により先願となる外国特許出願若しくはPCT国際特許出願の明細書が、後願のクレームに関連する開示を含んでいる場合、

公開言語にかかわらず、優先権出願の出願日に、後願排除効を有することとなった。


 


[1] In re Hilmer, 359 F.2d 859 (CCPA 1966)

[2]米国特許法第119条(a)の規定は以下のとおり。

第119 条 先の出願日の利益;優先権

(a) 合衆国において提出された出願の場合に若しくは合衆国の国民に対して同等の特権を与える外国において,又はWTO 加盟国において,先に同一発明に関する正規の特許出願をしている者又はその法律上の代表者若しくは譲受人が合衆国において提出する発明特許出願は,合衆国における当該出願が前記の外国出願がされた最先の日から12 月以内に提出されることを条件として,同一の発明に関する特許出願が前記の外国において最初に提出された日に合衆国において提出された同一出願の場合と同じ効果を有するものとする。

(第3回へ続く)

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