第3章 苦い後味 ? - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第3章 苦い後味 ?

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  1. 暮らしと法律
  2. 民事家事・生活トラブル
  3. 民事事件
連載「刑事法廷」
ケース2 ある常習窃盗事件

第3回
 第一回公判の前に、私はもう一度接見に行ってNと話し合うことにしました。そこでは長い間話し合いましたが、同じことの繰り返しでした。
N「本当に私はやっていません。でも信じてもらえないでしょうし、争ったって、結局は有罪になって重い判決になるんでしょ。そんなくらいなら認めて謝って、刑を軽くしてもらったほうがトクですね」
私「必ず有罪になると決まったことではない。あなたも本当に無実だというなら、私も付き合うからどんなに長くかかっても無罪の主張をしたほうが納得がいくのではないか」
N「それはそうだけど、しょせん私のような者の言うことは信じてもらえないでしょう。それとも先生は私が無罪になると思いますか」
私「・・・・」
 結局Nは否認に踏み切れず、私は気が変わったら連絡をするように言い、接見を終えました。
 そして迎えた第一回公判。検察官が起訴状を朗読した後、裁判官が「いま検察官が読んだ起訴状の公訴事実に間違いはありませんか」とNに尋ねました。すると、Nは「間違いありません」と答えたかと思うと突然、その場で土下座して頭を床にすりつけ、「申し訳ありません」と裁判官に深々と謝罪したのです。


(次回へ続く)