昇給は文字通り給料が上昇することですが、その上昇のさせ方は一般的にベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)から成り立っています。
ベースアップとは、経済や企業業績、インフレなどに合わせて賃金カーブそのものを上に移動させ賃金表を書き換えることをいうのに対して、定期昇給は、毎年一定の時期を決めてその企業の給与規程に定められた昇給制度に従って昇給することを意味します。
「ベア+定昇」という日本独特の昇給制度は所得倍増政策の時代に定着したものといわれ、経済や企業が成長して日本が欧米並みの豊かな生活水準を目指す過程においては大きな意義がありました。ところが経済発展をとげて賃金水準が国際的にトップレベルにまで達し、成果主義化への移行に拍車がかかる現在においては、そのあり方の是非が問われ始めています。
昨今は、大手自動車・電機メーカーなどを中心に次々と成果主義型賃金制度が導入され、ベースアップを行わない上に定昇までも廃止して人事評価の結果のみで昇給額を決定してしまうケースも増えてきました。
昇給をめぐっては、労使双方には大きな隔たりがありますが、個別企業組合ごとにその対応に温度差が生じてきているようです。
こうした個別化への動向から、一律的に賃金カーブの底上げを図るベースアップや年功的定期昇給はその機能を失いつつあり、「春闘」の存在意義も大きな岐路に立たされているといえるでしょう。