家具の転倒による損害の負担
借主から建物の明け渡しを受け敷金精算手続きを行っている。地震により借主の家具等が転倒して、壁クロスや床フローリングに大きな傷等の損害が生じている。
これらの傷は借主の家具の転倒によるものなので、修復費用を請求した。しかし、借主は傷がついたのは、地震による不可抗力だから負担する義務はないと主張している。
借主には地震に対する転倒防止策を行っていなかった過失がある。借主は現状回復費用として負担する義務はあるか。
大きな地震による家具の転倒は借主の責に帰すべきものではなく、その転倒により賃借物に傷がついたとしても借主は原則として現状回復義務は負いません。借主が地震に対する転倒防止策を施していない場合、善管注意義務に反しているとの主張があります。
主張のように過失があると考えることができなくもありませんが、借主は転倒防止策を講ずる義務があるとする社会的な合意が形成されているとまでは言えません。
しかし、借主が小さな地震でも転倒の可能性が高いといえる設置をして、設置に瑕疵があるといえる場合には、損害の賠償責任が生じることになります。とはいえ、設置に瑕疵があることを立証することは容易でないと思われます。
最近は、家電製品その他の商品において、具体的に地震に対する転倒防止策を示して設置について注意書きがあるものがあります。注意書きがあるにもかかわらず、何らの転倒防止策も講じなかった場合は、設置に瑕疵があつろ考えることもできます。
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