社長の机の引き出しの奥に仕舞われた事業計画書 - 成長戦略・競争戦略 - 専門家プロファイル

福岡 浩
有限会社業務改善創研 代表取締役 業務改善コンサルタント
神奈川県
経営コンサルタント

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寺崎 芳紀
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閲覧数順 2024年04月24日更新

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社長の机の引き出しの奥に仕舞われた事業計画書

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介護保険サービスを提供する事業所を運営する会社は、その多くが中小、極小規模です。大手介護会社に比べて資金繰りや事業運営の効率化は劣るものの、一事業所の規模としては顧客数も従業者数も、そして売上額もそれほど差がありません。むしろ、地域に密着したサービス提供や小回りが利く事業運営は中小、極小規模の事業所の方が優っていることもあります。介護事業所を数多く見てきた筆者には、それがよくわかります。

さて、事業規模の大小にかかわらず、また、どのような業種の事業であっても経営者は必ず事業計画を策定するものです。ところが、中小、極小規模の介護事業者は、ある時期まで事業計画もなく事業を営んでいるのは珍しくない状況でした。平成18年度から始まった「介護サービス情報の公表制度」による調査項目に、「毎年度の経営、運営方針等が記載された事業計画または年次計画があるか」という一行があり、当初は大手介護事業会社以外の事業者には事業計画などほとんどありませんでした。現在は、この制度が5年も経過しているので流石に「ない」という事業者は少なりましたが、事業計画はあるが、ただあるだけという事業者が相変わらず多いのが現状です。それは、調査対策で策定しているだけだからでしょう。

毎年、年度当初はこの一年の事業の目標やその目標を達成するための事業計画を策定しますが、数ヵ月後にはその事業計画書が経営者の机の引き出しの奥に仕舞われたまま、ついに1年間二度と日の目を見ないことになります。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。数名の中小、極小規模の介護事業経営者に尋ねたことがあります。その答えは、「事業計画を作っても、その後どうしたらよいかわからい」とか、「年度末になったらみればよいと思っていた」等など、様々でした。しかも、もう少し詳しく調べると、その事業計画は目標売上や目標予算などといった数値の羅列に過ぎない内容がもっとも多く、計画としては真にお粗末なものだということがわかりました。

事業計画が策定されていてもその内容が不十分な場合には、事業運営上の実績値との対比、その結果として浮かび上がってくる問題点、課題の抽出まで至らないのです。従って、事業運営の継続的な改善はできません。勿論、サービスの質の向上も望めないのです。事業計画とは、単年度の売上目標以外に年度の運営方針や目標達成のための行動計画を含む一連の計画書であることが標準的なものでしょう。

介護事業に限らず、小売業やサービス業でも、顧客を増やし売上を伸ばして維持するためにも事業計画が必要です。より多くの顧客を引き寄せるための方策がなければ、売上も伸びません。当たり前だろうと言われるかも知れませんが、その当たり前のことができないから、通年にわたり事業計画に沿った事業運営が必要なのです。

机の奥に仕舞われた事業計画書は策定から一年後に取り出されますが、その一年の実績値とはほど遠い結果に終わっていることが多いようです。会社の理念があり、経営方針があっても事業計画がなければ、「絵に描いた餅」をただ眺めているだけになってしまいます。例え事業計画が策定されていても、計画予算と実績値の乖離を是正する活動がなければ、これも「絵に描いた餅」になってしまいます。机の奥に仕舞わないで、日々の事業運営に活用する事業計画を策定したいものです。

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