皆さん、こんにちは。
「結婚にまつわる節税」というシリーズも、今回で4回目となりました。
今回からは、実務上でもよく質問を受ける『小規模宅地等の減額』についてお話していきたいと思います。
この『小規模宅地等の減額』は、前回までの配偶者だけに認められた特例とは違い、配偶者を含めた、被相続人と同居し、又は同一生計で暮らしている家族などが対象となっています。
正しくは「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」という『租税特別措置法』という法律の中の規定です。
一言で言ってしまえば、「一定の要件に該当する土地(宅地)について、一定の面積まで一定の割合で計算した金額を相続税の課税価格(=亡くなられた人から受け取った財産の価格)から控除します」という規定なのですが、その一定の要件といのが、かなり細かく、実務上でも判断の難しい部分が多い特例なので、この「小規模宅地等の特例」に関しては、回数を分けてちょっと細かくご説明していきたいと思います。
この特例の変遷を少しだけお話しますと、昭和58年にはすでにこの制度自体はできていたのですが、例えば1980年代後半~1990年代前半のいわゆる「バブル景気」の頃、あまりにも土地の価額が高騰し、相続税を払うために自宅や収入源泉となっていた土地(事業用地)を手放さざるを得ない人が続出したりしたため、憲法が保障する「最低限度の生活を営む権利」を国が脅かしてしまう結果になりかねないことを未然に防ぐ、そういう人たちの救済措置として、この「小規模宅地等の減額」と呼ばれる制度が改正され、今に至ります。
本コラムでは、この規定の適用条件、つまり「一定の要件」、「一定の面積」、「一定の割合」について、ひとつひとつ解説し、「同一生計」の意味や、実務上、例外的に認められるケースや判断が微妙なケース等についても言及していきたいと思っています。
では、最初に適用となる「一定の要件」とは何でしょう?その概略は以下の通りです。
1)相続開始直前において「被相続人」(又は「同一生計親族」)の「事業用」、又は「居住用」に使っている宅地であること。
2)建物、又は構造物があること。(更地はダメです)
3)棚卸資産ではない。(販売用の土地は対象外です)
4)A.「特定事業用宅地等」、B.「特定居住用宅地等」、C.「特定同族会社事業用宅地等」、D.「貸付事業用宅地等」のいずれかに該当していること。
かいつまんで申し上げれば、家族で事業用か居住用に使っている建物が建っている土地が対象になるということですね。
4)には、耳慣れない4つの宅地の種類が並んでいます。A~Dを簡単に一言で説明するならば…
A.「特定事業用宅地等」…被相続人(亡くなられた方)、又は同一生計親族が、不動産賃貸業を除く事業に使っている宅地。例えば、家族経営で和菓子店を営んでいた場合などの、その店舗用宅地を指しています。
B.「特定居住用宅地等」…被相続人、又は同一生計親族が住んでいた宅地。つまりは自宅ですね。
C.「特定同族会社事業用宅地等」…被相続人及び親族等が50%超で出資している同族会社の事業用に使っている宅地。例えば、家族経営の和菓子店を法人化し、その会社に店舗や事務所等を貸している場合等の宅地を指します。
D.「貸付事業用宅地等」…Aの「特定事業用宅地等」の事業の種類が「不動産貸付業」等になった場合です。例えば、アパート経営やマンション経営を収入源としている地主さん・家主さんがこれに当たります。
A~Dを駆け足でご説明しましたが、このA~Dの宅地等にも、それと認められるための要件が細かく決まっています。
長くなりましたので、そのA~Dの宅地等に付された要件、及び「一定の面積」、「一定の割合」等については、次回以降、詳しくお話していきたいと思います。どうぞ、お楽しみに。
このコラムの執筆専門家
- 高原 誠
- (東京都 / 税理士)
- フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。
フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。
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