米国特許判例紹介:先行技術の提出と不正行為(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:先行技術の提出と不正行為(第2回)

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米国特許判例紹介:先行技術の提出と不正行為(第2回)

~IDS提出基準の大幅見直しへ~

     Therasense, Inc., et al.,

               Plaintiffs Appellants,

           v.

  Becton, Dickinson and Company, et al.,

               Defendants- Appellees.

河野特許事務所 2011年8月31日 執筆者:弁理士  河野 英仁

(2)審査過程

 原告は551特許となる原出願を1984年に行った。13年後、原出願は、自身の特許であるU.S. Patent No. 4,545,382 (以下、382特許という)に基づき、新規性欠如および非自明性欠如を理由に拒絶を受けた。

 なお、この382特許に係る発明は欧州にも出願(EP0078636 (以下、EP 636という)されていた。EP636はさらに先願D1による拒絶理由を受けていた。参考図2は出願の前後関係を示す説明図である。

 参考図2 出願の前後関係を示す説明図

  382特許の明細書には、保護膜の必要性について以下の記載があった。

オプション的に、好ましくは(Optionally, but preferably)鮮血液(人体内の血液)に使用される際、水および糖分子を透過する保護膜は酵素および媒介層を囲む」。

  551特許のポイントは薄膜が電極近辺に存在しないことである。しかしながら、382特許の「オプション的に、好ましくは、・・・保護膜は」とする記載からすれば、薄膜を設けなくとも良いと考えられる。

  これに対し、原告社内弁護士Pope氏及び研究開発部長であるSanghera博士は、382特許の記載からすれば当業者は薄膜が必須であると判断するであろうと主張した。これに対し審査官は、先行技術である382特許が全血液に対して薄膜を必要とすることを示す宣言書を提出するよう要求した。

  Sanghera博士の宣言書の記載は以下のとおり。

 当業者は、全血液サンプルを使用するのであれば酵素および媒介を含む活性電極は保護膜を必要とすると感じるであろう。当業者は382特許のコラム4の63-65行目を、「全血液サンプルに対する保護膜の使用はオプション的または単に好ましいものにすぎない」と示唆していると読まないであろう。

  これにより、薄膜がないことを特徴とする551特許が成立した。

 

(3)欧州の審査経過

 自社の382特許のファミリー特許であるEP636は欧州においてドイツの先行技術D1による拒絶を受けていた。ここで、382特許に記載された、同一の文言

“オプショナルに、しかし好ましくは”に関し説明した。原告代理人は、拡散制限膜を必要とするドイツの先願D1との差別化を行うべく、以下の意見書を提出した。

 「オプション的に、しかし好ましくは鮮血に使用される場合、水およびブドウ糖分子を透過する保護膜は、酵素および媒介層の双方を囲む。」

 この開示は明白である。保護膜はオプショナルであり、しかしながら、鮮血に用いられる場合、特別な赤血球においてより大きな血液構成が電極センサに干渉することを避けるために、好ましいとされる。

さらに、前記保護膜はブドウ糖分子を、浸透から防ぐものではなく、該膜はブドウ糖分子に対し透過性がある。
これは、当業者にD1の膜はブドウ糖の透過性を制御しなければならないということを教示しており、保護膜の目的は、ブドウ糖分子の透過性を制御することではない。
この理由により、クレームされたセンサ電極はD1のセンサにおける半透過膜を有さない

 この意見書では膜を有さないと述べているが、あくまでブドウ糖の透過性を制御する先行技術D1に相当する膜が不要であると述べているにすぎず、382特許における膜は必要であるという主張には変わりない。

 

(4)訴訟の経緯

 2004年3月Becton(被告)は原告に対し、164特許および745特許の非侵害確認訴訟をマサチューセッツ州連邦地方裁判所に提訴した。被告は血糖テスト試験片を販売していた。原告は、被告の試験片が164特許、745特許および551特許を侵害するとして北地区カリフォルニア州連邦地方裁判所へ反訴した。2つの審理は北地区カリフォルニア州連邦地方裁判所に併合された。

  地裁は、原告がEPOに1994年1月12日に提出した意見書を、PTOに対して開示していなかったことを理由に、551特許は不正行為により権利行使することができないと判断した。

  原告は不正行為に基づく権利行使不能の判断を不服としてCAFCへ控訴した。CAFCは地裁の判断を維持する判決をなした。原告はCAFC大法廷によるヒアリングの申し立てを行った。CAFC大法廷は、原告の申し立てを認め、審理を行った。

(第3回へ続く)

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