IFRS強制適用に疑問を呈す大臣挨拶、企業会計審議会総会 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
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IFRS強制適用に疑問を呈す大臣挨拶、企業会計審議会総会

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雑感 会計問題

昨日のコラムでIFRS強制適用に疑問を呈した自見金融相の談話を

ご紹介しましたが、昨日6月30日16時から開催された企業会計審議会

における自見金融相の挨拶は、さらに中身に踏み込んだ内容でした。

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/hatsugen/soukai/20110630/01.pdf

 

5月にアメリカで出されたIFRS適用に関する指針について、

「私は米国基準の存続を前提にしている、IFRSを丸呑みするのではなく

コンバージェンスの方法による、例えば5-7年の時間をかけて移行する、

SECは報告権限を保持するという方針が示されており、IFRSの

全面採用から変化が生じているというふうに思っております。」

と述べるとともに、「例えばインドも一時はIFRSを採用すると言って

おりましたが、「農業会計」、「金融商品会計」等は別にするなどIFRS

全面アドプションをやめております。」と指摘する。

 

IFRSに否定的かというと、「会計基準の国際化の重要性は否定されるもの

ではありません。金融庁としても引き続き会計基準の国際的調和に向けて

最大限の努力を払ってまいります。」と、むしろ積極的な姿勢を示している。

それではなぜIFRSの全面適用に疑問を呈するのか?

「会計基準の国際的調和そのものが自己目的化し、経済活動が停滞することが

あっては」ならず、「国際的な要請を見極めつつ、国全体の経済活動の活性化

との両立を図っていくことが重要」なのであり、「そもそも、IFRSの

強制適用の決定が行われていないかにも関わらず、適切な準備期間の精査も

なされず、あたかも強制適用が当然の前提であるかのような状況が

生じていることが問題」だ、としているんですね。

 

「そもそも、会計制度は国における歴史、経済文化、風土をふまえた

企業のあり方、会社法、税制等の関連する制度、企業の国際競争力などと

深く関わりがあります。このような幅広い視点から、ワークプランで

導入の利点と影響を広範に検討するとともにラウンドテーブル等を開催し、

国民への説明責任を果たしている米国と同様の対応が必要であると考えます。」

との問題提起には、賛同したいところです。

 

その上で、今後の議論について、「ASBJの活動に委ねるのではなく、

この審議会でコンバージェンスの方向性をしっかりと議論をしていただきたい

と考えております。また、税法等との関わり、日本基準の位置づけ、

単体開示のあり方を踏まえ、「連結先行」の考えも見直さざるを得ない

タイミングに来ているものと考えております。さらに、会計基準の適用の

前提となる多様な資本市場のあり方、単体開示の廃止といった制度に関わる

論点」についても、企業会計審議会で議論することを要請しました。

 

ASBJ(財務会計基準審議会)は民間機関であるがゆえに、慣習法体系の

国家であるアメリカであれば、民の力の結集を尊重するところでしょうが、

制定法国家であるわが国では、法による強制力がある程度必要になってくる。

金融庁からの要請がASBJにおける議論にも影響を与えますから、

ASBJにおいても税法等との関わりや連結先行問題についても何らかの

検討がなされることでしょう。

 

IFRS強制適用は金商法適用会社のみが対象であるという見解も、

明確に謳われているわけではなく、税法等との兼ね合いからどこまでの

影響がありえるのか、真剣に議論する必要があるでしょうね。

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