前回のコラムでは、「相続人になれる人、なれない人」というテーマで、被相続人の様々な人間関係を想定して、民法上の相続権の有無についてお話しました。
今回はその続編として、まだ生まれていない直系尊属(子・孫)に関する相続権はどうなるのか、更に、相続人が誰もいない場合にはどうなるのかについてお話したいと思います。
通常、権利義務の主体たりうる地位は出生によって取得されますが、民法第886条第1項に、例外的に「相続に関しては、胎児はすでに生まれたものとみなす」とする条文がありますので、結果、胎児にも相続権があるということになります。
つまり、出生前に父親が亡くなったとしても、生れてきた子どもにも相続権は保証されています。
その胎児が、事実婚、もしくは入籍前の子ども等、婚姻関係にない男女の間の子どもであった場合には、嫡出子でない子どもと同様、男性側の相続に関しては「認知」が必要となりますので、「胎児認知」がなされていない場合は、「死後認知」の手続きが必要となります。
ただし、この場合の法定相続分は、婚姻関係にある子ども(嫡出子)の半分です。
相続人の中に胎児(出生前の子ども)が入りそうな場合、相続税法上の胎児に関する手続きの流れは、以下2つのうち、いずれかになります。
(1)相続税の申告期限前に出生した場合・・・通常通りに計算
(2)相続税申告期限後に出生の場合・・・胎児がいないものとして相続税を計算し、胎児出生後、出生日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求を行う
では、被相続人に法定相続人となるべき血族がおらず、遺言書もない場合、相続財産は誰に相続されるのでしょう?
法定相続権は、相続順位第3位の兄弟姉妹の一世代下(姪・甥)までで、3親等以上離れると、相続権は引き継がれません。
ですから、配偶者がなく、子ども(孫)もなく、両親(祖父母)はすでに他界しており、兄弟姉妹もいない、遺言書もない…となった場合には、以下のような流れになります。
イ)相続財産管理人の選任
↓
ロ)相続財産管理清算
↓
ハ)相続人捜索
↓
ニ)相続人不存在、家庭裁判所の許可を受けたならば、「特別縁故者」へ
↓
ホ)相続人不存在で、「特別縁故者」の申立てがない、もしくは申立てはあるものの家庭裁判所の許可が受けられない場合には国庫へ帰属
「特別縁故者」とは、生計を同じくしていた人や、被相続人の療養介護に努めていたと家庭裁判所に認められた人のことです。(本人の申立てが必要です)
以上、様々なケースについて相続人になるのか、ならないのかを見て来ました。
ただ、注意すべきは同じく「相続権」を有する相続人であっても、相続税を2割加算される相続人と、そうでない相続人がいます。
次回のコラムでは、「相続税の加算」についてお話したいと思います。どうぞお楽しみに。
このコラムの執筆専門家
- 高原 誠
- (東京都 / 税理士)
- フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。
フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。
「相続税・贈与税の基礎知識」のコラム
登記について・最終回(2012/10/01 16:10)
贈与登記について(2012/09/25 12:09)
遺言書の応用知識~遺言で残せること、残せないこと-その2(2012/06/10 19:06)
遺産分割はいつまでに?(2012/05/23 13:05)
もうひとつ準確定申告の話~相続編~(2012/02/17 20:02)
このコラムに類似したコラム
相続財産はどのように分けられる?~法定相続の話~ 高原 誠 - 税理士(2011/01/28 12:14)
相続税還付の法的根拠は? 藤宮 浩 - 不動産コンサルタント(2011/01/28 12:16)
相続税還付とは 藤宮 浩 - 不動産コンサルタント(2011/01/14 17:38)
子どもら名義の預金の取扱いにご用心 酒井 尚土 - 弁護士(2014/05/14 10:16)
秘密証書遺言について。 加藤 幹夫 - 行政書士(2014/01/05 13:02)