米国特許判例紹介:機能的クレームに対する記載要件(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:機能的クレームに対する記載要件(第1回)

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米国特許判例紹介:機能的クレームに対する記載要件(第1回)

~ソフトウェア特許の構造とは~

In Re Kats Interactive Call Processing Patent Litigation, LLC,

河野特許事務所 2011年5月30日 執筆者:弁理士  河野 英仁

1.概要

 米国においては米国特許法第112条パラグラフ6の規定に基づき、具体的な構造を記載することなく機能的にクレームを記載することが認められている。

 

 米国特許法第112 条パラグラフ6 は以下のとおり規定している。

「組合せに係るクレームの要素は,その構造,材料又はそれを支える作用を詳述することなく,特定の機能を遂行するための手段又は工程として記載することができ,当該クレームは,明細書に記載された対応する構造,材料又は作用,及びそれらの均等物を対象としていると解釈されるものとする。」

 

 機能的クレームはミーンズ・プラス・ファンクション(以下、MPFという)クレームと呼ばれ、”means for ~ing (~する手段)”の如く具体的な構造を特定することなく、作用的な記載とするクレーム形式である。作用的な記載を認める代償として、その権利範囲は実施例に記載された構造等及びその均等物に限定解釈される。

 

 汎用プロセッサ上で動作するソフトウェア関連発明においては、ソフトウェア処理自体の内容を具現化する有形の構造が存在しないため、クレーム及び実施例は、機能的な記載とならざるを得ない。米国の特許実務ではソフトウェア関連発明のクレームを作成する場合、機能的な記載とする代わりに、明細書には対応する「構造」として「アルゴリズム」を記載することが求められている。

 

 本事件では、汎用プロセッサ上で動作するインタラクティブ電話処理システムのクレームがMPF形式で記載されており、対応する構造としてアルゴリズムが、明細書に適切に記載されているかが争点となった。CAFCは争点となった全てのMPFクレームが不明確であるとした地裁の判決を一部支持したが、汎用プロセッサ上で機能するあらゆる処理についてまで対応するアルゴリズムの記載を要求した地裁の判決を一部無効とした。

2.背景

(1)特許発明の内容

 Kats Interactive Call Processing Patent Litigation, LLC(原告)はインタラクティブ電話処理システム及び電話会議システムに関する数多くの特許を所有している。本事件で問題となった特許は以下のグループに分類される。なお、各特許は明細書を共通にしている。

 

(2)第1グループ

 第1グループは、「統計インターフェース」に関し、多くの電話利用者グループからのデータを取得し、グループの小集団(サブセット)を特定すべく当該データを使用するインターフェースシステムを権利化している。

 

 クレームされたシステムは様々な電話を基礎とする処理(例えば、「オークション販売、コンテスト、くじ引き、選挙、商業処理、ゲーム等」)に関連して使用される。対象特許はU.S. Patent No. 5,684,863(以下、863特許という)、6,292,547(以下、547特許という)、5,815,551(以下、5,815,551特許という)及び6,148,065(以下、065特許という)の計4つである。参考図1は863特許の図1である。

 

参考図1 863特許の図1

(3)第2グループ

 第2グループは「条件付きインターフェースプラス」に関し、数多くの着信を扱うこができ、これらの着信をオペレータ拠点またはコンピュータ処理拠点のいずれかへ誘導することのできる「電話・コンピュータ間のインターフェースシステム」を権利化している。対象特許は、U.S. Patent No. 5,351,285(以下、285特許という)の1件である。

 

(4)特許訴訟を開始

 原告は2005年から2006年にかけて、American Airline, Fedex等が特許権を侵害するとして、各州の連邦地方裁判所で特許権侵害訴訟を提起した。これらの案件はカリフォルニア州連邦地方裁判所でまとめて審理されることになった。

 

(5) 地裁判決

 地裁は、いくつかのクレームがMPFクレームで記載されているところ、不明確であるため無効であると判断した。クレームの対応する構造として、明細書には汎用プロセッサが記載されているだけであった。そして、当該汎用プロセッサがクレームに記載された機能を実行するためのアルゴリズムを開示していなかったため無効と判断された。原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。

(第2回へ続く)

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