先日、勤め先が不動産業界ではない知人より、こんな質問を受けました。
「新浦安の地価って、相当下がったんでしょ?」
普段から不動産取引に携わるこのと殆ど無い方であれば、テレビ等で映し出されるあの液状化の状況を見ると、そう思われるのも当然でしょう。
では、実際に新浦安の地価相場が現時点で下がったのかというと、「まだ分らない」という回答が正解であるように思います。
大震災以降、不安や保証等の問題で、不動産取引自体が殆ど成立していないというのが現状でしょう。
例えば、これまで5,000万円で販売していた土地を、現時点で3,000万円に値下げしたとして、それで取引が成立するかというと、それは分りません。また、借りに3,000万円で取引が成立すれば、今後はそれが取引相場になるのかというと、あくまでも個別事例であり、尚且つ大震災という特殊要因が価格形成に大きな影響を与えている為、この成約事例をもって「相場が下落した」とも言えません。
(ただし、不動産取引とは一対一の相対取引ですので、売り手と買い手の思惑が一致すれば、上記のような取引も実際に有り得ます。)
相場価格とは、数多くある取引事例の統計結果のようなものですので、統計を出す為に必要な事例が蓄積していく必要があります。
高額であり、移動できず、一つとして同じモノがなく、数自体も限定的である不動産という商品の性質上、新たな相場が形成されるまでに1年半~2年くらいは期間が掛かるのでは、と思います。
この1年半~2年という期間の中で、軟弱地盤に対する印象なり対策が飛躍的に改善・向上する可能性は低いですから、価格相場としても下がらざるを得ないことは間違いありません。
結局、不動産価格も “人間のマインドで動く” という要素が非常に強い、ということを、今回の大震災をキッカケに強く感じました。
なお、公的地価指数である公示地価等が、実際の価格相場と同様の動きをするかというと… 恐らく平成バブル崩壊後の時のような時価(相場)と公的地価の乖離が現れるでしょう。
それでは、今後日本全体の不動産価格は、少なくとも数年間下がり続けるのか、というと、決してそうなならないと私は考えます。
大震災以降の不動産価格形成には、これまで以上に「二極化」の状況が見られるようになるのではないでしょうか。
そして、その差を生む要素として、「標高と地盤」が大きなポイントとなることは確実です。
日本でも、海外でも、昔から人間が居住し、いわゆる「高級住宅街」と呼ばれるエリアは、その多くが高台に存します。
私がこれまでに取引経験のあるエリアであれば、港区の白金・高輪エリア、横浜の山手…といった住宅街が、さらにそのブランド価値を高めるのではないでしょうか。
未曾有の大震災による不動産取引におけるパラダイムシフトが今後急速に進むことは間違いありません。
株式会社リード 中石 輝
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