小規模宅地特例の「主として居住の用」への武富士事件の影響 - 相続税 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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小規模宅地特例の「主として居住の用」への武富士事件の影響

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山岡美樹税理士が書かれた「武富士事件の今後の実務への影響第2回

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」が

国税速報6159号(平成23年3月28日発行)に掲載されている。

 

武富士事件(最高裁平成23年2月18日判決、TAINSコードZ888-1572)

については、2月24日に、すでにご紹介させて頂きましたが、

実務に与える影響は、かなり大きなものになりそうです。

 

「例えば、被相続人に「居住の用に供されていた宅地」(生活の拠点と

していた宅地)が複数個所ある場合の小規模宅地等の特例の対象となる

特定居住用宅地等は、一の者の「居住の用に供されていた一の宅地等」は

一か所に限られるという趣旨から、被相続人が「主としてその居住の用に

供していた一の宅地等」が本件特例の対象となります。」(山岡論文6頁)

「相続税の申告書は、被相続人の住所地を管轄する税務署長に申告を

しなければならず(カッコ内略)、仮に被相続人の生活の拠点が複数個所

ある場合、(略)「反対の解釈をすべき特段の事由がない場合、客観的に

生活の本拠たる実体を具備している一定の場所を判断(武富士事件では、

日数の多寡により客観的に判断しています。)する」こととなります。」

(山岡論文7頁)

 

そうすると、平成20年10月2日裁決(裁決事例集76集450頁、

TAINSコードJ76-4-25)のように、長期的に老人ホームに入居した後、

亡くなったケースでは、生活の本拠は、入居前に居住し、相続時に空き家に

なっている旧宅にはなく、老人ホームにあるから、小規模宅地等の特例は

適用されないことになろう。

 

それでは、長期入院で1年以上家を留守にし、帰宅の可能性がない

ケースではどうなるのだろうか。

 

武富士事件は、生活の本拠の判断を日数の多寡に求めていますから、

小規模宅地等の特例を適用して、相続税の節税に努めたいのであれば、

老人ホームへの入居はもとより、長期入院さえ、在宅介護を選択せざるを

得なくなる危険性を孕んでいることになりはしないか?

 

山岡論文を読み、勉強不足を恥じながら、ゾッとしました。

この点について研究を深めて、論文にまとめなければなりませんね。

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