コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(5) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(5)

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コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(第5回)

~米国特許法第112条審査ガイドライン公表される~

河野特許事務所 2011年4月28日 執筆者:弁理士  河野 英仁

(5)CS関連発明の機能的クレームについての米国特許法第102条(新規性)及び第103条(非自明性)判断

 特定の構造に限定されない機能的クレームは、記載の機能を実行することが可能な全ての装置を包含する。従って、先行技術がクレームされた機能を本来実行できる装置を開示していれば、米国特許法第102条及び第103条に基づく拒絶に該当する場合がある[1]

 

(i)「コンピュータ」という文言の範囲

 CS関連発明の機能的クレームの限定はまた、「コンピュータ」という語が、通常、当業者にとって、複雑さや能力の程度の違う様々な装置を指すとされるという理由からも、広いものになり得る。したがって、「コンピュータ」という語を含むクレームは、その語が他のクレーム中の文言によってモディファイされているか、または、通常の意味とは異なるものと明細書中で明確に定義されていない限り、一連の特定の特徴及び能力を有するコンピュータに限定されると判断すべきではない

 

(ii)Paulsen事件[2]

 Paulsen事件においては、可搬型コンピュータについてのクレームが、計算機(calculator)を開示する引用文献によって予期できるとして、米国特許法第102条に基づき拒絶された。これは、「コンピュータ」という語に対して明細書中で「計算機」も含むとしたことに加えて、最も広い合理的な解釈がなされたからであり、また、当業者は計算機を特定の種類のコンピュータであると判断するからである。

 

(iii)CS関連発明の機能的クレームに対する新規性及び非自明性の審査基準

 CS関連発明の機能的クレームが自明であるか否かを判断する場合、審査官は、手動の機能を代替することで同じ結果を出すとして自動化された手段を広くクレームしても、先行技術と区別することにはならないという点に注意すべきである。さらに、汎用コンピュータにおいて公知機能を自動化することが、先行技術要素が確立した機能に従って当該先行技術要素を予測可能に使用したに過ぎない場合、コンピュータにおいて公知機能を実現することは当業者にとって自明であるとみなされる。

 

  同様に、既存の処理をインターネット及びウェブ・ブラウザ技術に適応させて情報を通信または表示することも自明であると考えられている。理由は、これらの技術は上記の機能に対して一般的なものになっているからである[3]

 

3.コメント

 CS関連発明の機能的クレームに対する明細書の「記載要件」及び「実施可能要件」を中心に解説した。CAFCが述べたとおり、CS関連発明のクレームは機能的な記載となりがちである。機能的がある故に、いきおい権利範囲が広すぎ、実施可能要件を具備しないこととなる。ガイドラインに記載されているように新規な局面については、実施可能要件違反とならないよう、複数の例を丁寧に記載しておくことが必要となる。

 

 また、機能的なクレームを記載し、実施例でも機能のみをもって説明を行うとすれば、「記載要件」違反となる。ガイドラインに記載されているように、コンピュータ(ハードウェア)及びアルゴリズム(フローチャート)が相互依存するように記載し、クレームされた機能を達成するために、当該コンピュータをプログラムする方法が当業者にとって理解できる程度に明細書を記載することが必要とされる。

 

【関連事項】

米国特許法第112条に関する補足審査ガイドラインは以下からダウンロードすることができる[PDF]。

http://edocket.access.gpo.gov/2011/pdf/2011-2841.pdf

 

 


[1] さらなる情報については、MPEP2112及び2114参照。

[2] In re Paulsen, 30 F.3d 1475, 1479–80 (Fed. Cir. 1994)

[3] 非自明性に関する2010KSRガイドラインについては拙稿「米国特許判例紹介(第41回) KSR最高裁判決後の自明性判断基準 ~2010 KSRガイドライン~」知財ぷりずむ、経済産業調査会2010年12月号を参照されたい。

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