コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(2) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(2)

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コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(第2回)

~米国特許法第112条審査ガイドライン公表される~

河野特許事務所 2011年4月22日 執筆者:弁理士  河野 英仁

(3)CS関連発明の機能的記載に関する明細書の記載要件(adequate written description requirement)

 

 米国特許法第112条パラグラフ1は以下のとおり規定している。

 

「明細書は,その発明の属する技術分野又はその発明と非常に近い関係にある技術分野において知識を有する者がその発明を製造し,使用することができるような完全,明瞭,簡潔かつ正確な用語によって,発明並びにその発明を製造し,使用する手法及び方法を記載した説明を含んでいなければならず,また,発明者が考える発明実施のベストモードを記載していなければならない。」

 

 明細書の記載要件を満たすには、明細書に、クレーム発明を十分に詳述し、クレーム発明の所有権が発明者にあることを当業者が無理なく結論づけられるようにしなければならない。具体的には、明細書には、クレーム発明を当業者に理解可能なように、かつ、発明者がクレーム発明を実際に発明したことを示すように記載しなければならない。

 

 米国特許法第112条パラグラフ1に規定する記載要件は、出願時に開示された元のクレームを含む全てのクレームに適用される。CAFCは、「出願時のクレームは明細書記載要件を満たすものが多いが、満たさないクレームも存在する可能性がある」と指摘している。例えば、出願時の包括(generic)クレームの文言が、クレームされた属(genus)の範囲をサポートしていない場合、明細書の記載要件を具備しないこととなる。

 

(i)LizardTech事件[1]

 LizardTech事件における発明では、シームレス離散ウェーブレット変換(discrete wave transformation) (“DWT”) を用いてデジタル画像を圧縮する方法をクレームしていた。CAFCは、このクレームが、シームレスDWTに至るDWTベースの圧縮処理を行う方法を全て包含すると判断した。これは、シームレスDWTがどのようにして達成されたかについての限定がなかったからである。

 

 しかしながら、明細書には、シームレスDWTを作成する方法は1つしか記載されておらず、より一般的なDWT係数のシームレスアレイ作成方法を意図していたという証拠が存在しなかった。以上の理由によりLizardTech事件においては、発明者が包括クレームを発明したという十分な証拠を明細書中で示せなかったことから、明細書の記載要件は満たさないと判示された。

 

(ii)機能をどのように達成するかを記載する

 機能的クレームについて、クレームされた機能を、その発明によっていかに達成するかを明細書中で十分特定していない場合、当該クレームは、明細書の記載要件を満たさないと判断される場合がある。

 

 Ariad事件[2]において、CAFCは、機能的クレームが用いられているものの、クレームされた機能を達成する種(species:属genusの下位概念)の例、すなわち機能を実現するための具体的な例が明細書中に記載されていない点を指摘している。

 

 特に、クレームされた属の境界を明確にすべく機能的文言を用いた属クレームについて、問題となる。機能的クレームは、単に所望の結果をクレームすることができ、その結果を達成する種を記載しなくても良い。しかしながら、明細書には、出願人がクレームされた結果を達成する包括的な発明をなしたことを論証すべきであり、出願人がその機能的文言で定義した属に対するクレームをサポートするのに十分な種を発明したことを示さなければならない

 

 明細書の記載要件を満たすのにどの程度詳細な記述が必要とされるかは、クレームの性質及び範囲によって、また関連技術の複雑さ及び予測可能性によって変わる。CS関連発明は、その機能性に関して開示及びクレームされることが多い。これは、機能が適切に開示されていれば、当該機能を実行するソフトウェアに対するコンピュータのプログラミング・コードを、当業者の技術範囲内で記述することができるからである。

 

 ただし、CS関連発明について、開示の十分性を判断するためには、開示されたハードウェアと開示されたソフトウェアとの両方の十分性を調べる必要がある。コンピュータのハードウェアとソフトウェアとは相互に関係し、また相互に依存しているからである。


[1] LizardTech, Inc. v. Earth Res. Mapping, Inc., 424 F.3d 1336, 1343–46 (Fed. Cir. 2005);

[2] Ariad Pharms., Inc. v. Eli Lilly & Co., 598 F.3d 1336, 1353 (Fed. Cir. 2010) (en banc)

(第3回へ続く)

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