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コンピュータ関連発明の機能的クレームに対する審査ガイドライン(第1回)
~米国特許法第112条審査ガイドライン公表される~
河野特許事務所 2011年4月20日 執筆者:弁理士 河野 英仁
1.概要
コンピュータ関連発明については、ソフトウェアによる処理自体に特徴があり、コンピュータのハードウェア自体には何ら新規な点が存在しないことが多い。この場合、クレームの各構成要件は構造としてではなく、処理内容を機能的に記載することとなる。
機能的な記載とすれば権利範囲が不明確、または、不当に広くなる場合があり、その場合、明細書の「記載要件」及び「実施可能要件」を要求する米国特許法第112条の規定に反することとなる。
米国特許商標庁(以下、USPTOという)は、2011年2月9日現行の審査基準[1]を補足する審査ガイドラインを公表した。本ガイドラインは2011年2月9日即日効力を発生し、2011年2月9日以前の出願、及び、2011年2月9日以降の全ての出願の審査に適用される。なお、2011年4月11日まで本ガイドラインに対する意見をUSPTOに対し提出することができる。
本稿では、本審査ガイドラインのうち、特にコンピュータ関連発明に要求される基準について解説を行う。
2.コンピュータ・ソフトウェア関連発明(以下、CS関連発明という)における機能的クレームに対する審査
(1)審査の原則
CS関連発明においても、通常の発明と同様に、米国特許法第101条に規定する保護適格性、米国特許法第112条パラグラフ2に規定する明確性、米国特許法第112条パラグラフ1に規定する3要件(記載要件、実施可能要件、ベストモード要件)、米国特許法第102条に規定する新規性及び米国特許法第103条に規定する非自明性の各要件を具備する必要がある。ただし、特定の構造を限定しない機能的なクレームに対しては独自の審査上の問題が存在する。
(2)機能的クレームとは
米国特許法第112条パラグラフ6は以下のとおり規定している。
「組合せに係るクレームの要素は,その構造,材料又はそれを支える作用を詳述することなく,特定の機能を遂行するための手段又は工程として記載することができ,当該クレームは,明細書に記載された対応する構造,材料又は作用,及びそれらの均等物を対象としていると解釈されるものとする。」
機能的クレームはミーンズ・プラス・ファンクションクレーム(以下、MPFクレームという)と呼ばれ、”means for ~ing (~する手段)”の如く具体的な構造を特定することなく、作用的な記載とするクレーム形式である。作用的な記載を認める代償として、その権利範囲は実施例に記載された構造等及びその均等物に限定解釈される。
一方、”means for”または”step for”を使用していなければ同規定は推定適用されないが、明らかに機能的な記載であれば、米国特許法第112条パラグラフ6が適用される場合もある。特にCS関連発明のクレームの各構成要件は、具体的な構造があるわけではなく、機能的な記載となることが多い。このような場合、以下の基準に従って審査が行われる。
[1]米国特許商標庁編「Manual of Patent Examining Procedure 第8版」(2010年8月)
(第2回へ続く)
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