マドレーヌの由来とは - 洋菓子・和菓子 - 専門家プロファイル

塚本 有紀
フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
大阪府
料理講師

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対象:料理・クッキング

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マドレーヌの由来とは

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マドレーヌMadelaineには「お菓子作り一年生!」のイメージがありますが、じつはシンプルがゆえに難しいと、私はいつも思っています。

きれいな焼き色を出すにはまず型の選択が意外に重要となりますし、つぎにはバターの塗り方だけでも大きく違ってきてしまいます。もちろんそれぞれのお家のオーヴンの温度や時間にも注意が必要です。

マドレーヌはそもそもはマドレーヌさんという女性の名前に由来していると言われます。発祥はフランスのロレーヌ地方です。

諸説ありますが、ポーランドの王位を追われたスタニラス・レクチンスキーがコメルシーCommercyにいたときに、お城の菓子職人が宴会の途中で喧嘩をして辞めてしまい、デザートにだすものがなくなり困り果て・・。召使いの少女マドレーヌが、あるいは女料理人のマドレーヌが、即興で作ったのがマドレーヌと言われています。このお菓子にいたく魅了されたレクチンスキー王はヴェルサイユに住む娘であるマリー・レクチンスキー(ルイ15世妃)に送り届けました。じつはルイ15世にはほかに愛人がいて、なんとか王の愛を娘につなぎ止めさせようと、父は他にもさまざまな料理やお菓子を届けたのだそうです(切ない!)。

コメルシーでは長い間このレシピは秘密とされ、お菓子屋の間で高い値段で売り買いされていたのだそう。今もマドレーヌはこの町の特産品として作られていて、パリでも木箱に入ったコメルシーのマドレーヌMadelaine de Commercyが売られています。お菓子屋さんの奥の棚やデパートの食品館の地方銘菓コーナーにあります。ぼそっとしていますが、素朴に味わい深くおいしいものです。

パリではじつはマドレーヌはどこのお菓子屋さんにも必ずある、というものではありません。そして日本とは違って、裸で売られています。民族的にお菓子の食感がふわふわであることは必要ないらしく、かつ気候も乾燥していますから、がっしりめ。

マドレーヌというと必ずマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の中で、主人公が追憶にひたりながらマドレーヌを紅茶に浸して食べるシーンがよく引き合いに出されますが、なるほどと納得できます。(以前「それはどんな場面なのだろう、私も読んでみよう!」と本屋さんに出かけました。探し当てた「失われた時を求めて」は全14巻、しかもかなり厚い。そのシーンは第1巻にあるらしいのですが、またいずれ・・・いつか・・・)

私はベーキングパウダーを使わないため、とくに冬場の寒いときは、お菓子の膨らみや食感に大きな影響を受けてしまいます。全部のお菓子の中で技術的なぶれが一番許されないのが、マドレーヌだと感じています。泡立てが足りないと固すぎるし、ときにふっくらせず貧弱だったり、シリコンの型で焼くと底がへこんだりもします(これはシリコンの火通りが悪いから、火通りのバランスが崩れるため)。教室を始めた当初は、相当に手こずらされました。今までで一番失敗の数の多かったのがマドレーヌなのかもしれません。ベーキングパウダーというのは、たんに膨張剤だと思っていましたが、技術的なブレをカバーするという意味合いにおいて、偉いのだなあとつくづく感心してしまいます。

授業ではプレーンとオレンジの花の蜂蜜をたくさん入れた蜂蜜マドレーヌをご紹介しています。蜂蜜マドレーヌははっきりと蜂蜜の風味が感じられるため、とても面白いものです。

他の種類もこれまで相当な数を試してきましたが、よかったのはコーヒーの花、菩提樹、みかん、ブラックベリー、しゃくなげ、たんぽぽ(ブルゴーニュ産)など。オレンジはもちろん安定して好きです。プロヴァンスのラヴェンダーはデザート用のマドレーヌによく使います。

逆によくなかったのは、フランボワーズ、国産のバラと桜。どれも素晴らしく上品で繊細で気品があり、ゆえにマドレーヌになるとそのはかないよさが消えてしまうのです。ただしトーストに塗るのには、最高です。

「普通・・」は数知れず。そして自分自身が好きになれないタイプの芳香があるものはあたり前ですが、向きません。

結論「マドレーヌには、強めのクセと酸があるものが向く。ただし自分の好きなタイプで」です。ただし農産物なので、国によって、ロットによって全然違う印象を持つことも。でもそれが楽しいものです。

 

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