(続き)・・それならば早期のうちにガンを手術してしまえば安心か、というと必ずしもそうではありません。早期ガンは手術で8割から9割は治ると長らく信じられてきましたが、近年の研究では早期ガンといえども、手術するだけでは充分な治療効果の得られないことが分かってきました。例えば約1400例の手術例の長期予後を調べた研究では、早期ガンも含めて5年生存率が52%という結果でした。つまり手術でガンを除去した人の2人に1人は5年以内に死亡しているのです。
手術後5年以内に死亡した人の死因を調べると、多くはガンの再発や転移または新たなガンの発症が原因でした。つまり体内に未だガンが残っていたか、あるいはガンが発症しやすい体質になっていたものと考えられるのです。この研究をまとめた外科医の済陽高穂氏は、早期ガンといえども手術で病巣を切り取るだけでは不充分で、体内に残っていると想定されるガンを別の方法で除去し、ガンを発症しやすい体質そのものを改善する必要がある、と結論づけています。
すなわちガンを発症するいくつかの原因が体の内外にあり、それが改善されずに放置されている場合には、いくら上手に手術して取り除いたとしても、遅かれ早かれガンが再発や転移をしたり、あるいは別のガンが発症したりする可能性が高いのです。ということは、今目の前にあるガンを手術などで治療する一方、その再発防止や別のガンを予防する目的で、ガンを発症するに至った原因を軽減または除去するための取り組みが、どうしても必要になってきます。
それではそのガンを発症しやすい原因としては一体どのようなものがあるのでしょうか。上述したようにガンの疫学研究では、例えば従来から胃ガンと塩分、大腸ガンと動物性脂肪、肺ガンとタバコなどが深い関係性を指摘されてきましたが、最近の研究では食生活とガンとの関係性が、より密接であることが分かってきました。毎日の食事からいやおうなく体内に入ってくる食材や栄養素、あるいは添加物の類が、ガンの最大の要因になっているというのです。
日本ではガンがうなぎ上りに増加している、と冒頭で述べましたが、それとは対照的に、米国では10数年前からガンが減少に転じています。それだけでなく心臓病や糖尿病なども減少傾向で、軒並み増えている日本とは実に好対照です。かつて米国は心臓病、ガンともに先進国の中ではトップクラスの死亡率で、平均寿命も短くおよそ不健康な印象のある国でしたが、今では健康な国の仲間入りを果たしつつあります。この米国の劇的な変化は何によるのでしょうか。
それは世界に先駆けて拡がった禁煙運動とともに、官民挙げて取り組んだ食生活の改善運動が奏功したのが最大の理由です。米国では1969年に上院議院で、米国人の食生活を根本から改めることを強く促す「マクガバン・レポート」が提出されました。米国内ではそれを契機として、肉食や乳製品に偏った食事から野菜、果物など植物性食品を中心とした食事に改めるよう、企業や学校、病院、地域などで幅広く改善運動が展開されたのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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