(続き)・・患者数が単純に増加しているだけではありません。最近の傾向として、若年者や小児のガンが特に増えています。10代から30代の若者のガンがたいへんな勢いで増えており、戦慄さえ感じるほどです。また以前から日本人に多かった胃ガンが減少する一方、大腸ガンや膵臓ガンが著しく増加し、また男性では前立腺ガン、女性では乳ガンや卵巣ガンの増加が顕著です。この変化は主として食生活や環境の変化の影響を受けている、といわれています。
そのように一貫とした増加と変貌をみせているガンですが、その増加の要因としてはどのようなものがあるのでしょうか。よく指摘されている因果関係として「タバコ」と肺ガンが挙げられます。タバコの煙に含まれる各種の発ガン物質が肺の細胞に対して長年にわたり刺激を加え、その結果として肺ガンを発症させるというものです。米国から始まった「禁煙」運動によって肺ガンの死亡率には確かに翳りがみえましたが、腺癌など一部のタイプの肺ガンはむしろ増加しています。
次に指摘されているのが「食事」です。10数年前まで日本人に最も多かった胃ガンの原因の一つとして「塩分」が挙げられています。冷蔵庫のなかった時代、寒い冬を乗り切るために塩気の多い食事を摂っていたのが胃ガン多発の原因の一つでした。東北地方は特にその傾向が明らかでしたが、秋田県をはじめとして県をあげて減塩運動に取り組んだ結果、胃ガンは次第に減少傾向となり、死亡率首位の座を肺ガンに明け渡したのです。
胃ガンに代わって増加してきたものの一つが大腸ガンです。欧米の多くの国では昔から死亡率トップでしたが、食生活の欧米化によって日本でも著明に増えてきています。肉や乳製品、油脂類などに含まれる動物性タンパクやコレステロールなどが大腸の粘膜細胞を変性させ、ガンを発症させるとされています。それに運動不足も加わって、慢性的な便秘になると腸内で硫化化合物などの有毒ガスを発生させ、腸管粘膜に慢性の刺激を与えている点も見逃せません。
特殊な原因として知られているのは「アスベスト」です。これは石綿に含まれる成分で、建築現場で作業員が吸引するなどして肺の中皮腫にかかる事例が多発し問題となりました。それから「ヘリコバクター・ピロリ菌」は胃潰瘍や胃ガンの主要な原因として知られており、胃の検査でピロリ菌の存在が証明できた場合には、その除菌が行われています。さらに一部の白血病ではウイルスの関与があり、そのウイルスの偏在によって罹患率に大きな地域差がみられます。
以上のような物理的な要因だけではありません。多くの研究者が「ストレス」も原因の一つであることを証明しています。動物実験でもストレスの多い環境にいるとガンの発症が著しく増加しますし、疫学調査でもストレスの多い人ほど各種のガンが多発することが指摘されています。現代はIT化や人間関係の複雑さなどが加わり、ストレス性の疾患が増えていますが、ガンの増加の原因の一つにストレスがあるのは間違いないといえるでしょう・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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