(続き)・・日本人は古来これらの発酵食品をふんだんに活用してきたにも関わらず、近年その摂取量が減少しているようですが、米国などでは健康ブームの影響もあって、反対に納豆も含めて摂取量は増加傾向です。日本ではガンや心臓病が増加傾向なのと対照的に米国では減少傾向に転じているのは注目されますが、それはこの発酵食品をどれだけ摂っているかということとも無関係ではありません。アレルギー対策に限らず今一度、発酵食品の価値を見直してみるのも悪くないでしょう。
さて我々の日常の食卓には、アレルギー体質を招きやすい食材というものが多数存在するので、充分な注意が必要です。すなわち各種の添加物、古くなった植物油やマーガリンなどの加工油、精製した砂糖や小麦粉、卵、牛乳製品などです。我が国は欧米などに比べてこれらに対する規制が甘く、危険な添加物や食材が野放しにされているのが実態です。我々はこれらを普通の生活でも口にしてしまう機会が多いため、よほど意識をしないと自分の身を守るのは難しい、ともいえそうです。
反対に上記の発酵食品以外にも、アレルギーを予防するのに効果的な食材はいくつも存在します。一つには新鮮な「野菜」と「果物」です。実際に生の野菜や果物をたくさん摂取する人は、そうでない人に比べてアレルギー疾患の発症率が明らかに低いというデータが出ています。野菜や果物はビタミンやミネラル、食物繊維の宝庫である上に、抗酸化作用の強いファイトケミカル(植物性生理活性物質)が豊富です。このような成分はアレルギーだけでなく、ガンや動脈硬化などの予防にも威力を発揮します。
一方でシイタケやシメジ、マイタケなどのキノコ類にはβ―グルカンという成分が豊富ですが、これは免疫力を調整してアレルギー反応を抑制します。またワカメや昆布などの海藻類、それにオクラやジュンサイなどにはフコダインというヌメヌメした成分が含まれていますが、これは腸内細菌叢をきれいにしてアレルギーを抑えることが分かっています。さらに大豆などの豆類に含まれるイソフラボンも、動脈硬化を抑制するとともに免疫力を調整してアレルギー反応を抑制するとされます。
上記の中でもとりわけアレルギーを抑える効果の高い食材としては、まず「シソ」が挙げられます。シソには独特の香りがありますが、ルテオリンを初めとする香り成分に、アレルギーに深く関係するTNF(腫瘍壊死因子)という物質の産生を抑制する作用が認められています。実際にアトピーの人にシソ入りのジュースを飲ませると、7~8割の人に症状の軽減がみられたと報告されています。またシソの実から採った油(シソ油またはエゴマ油)にも強い抗アレルギー作用が認められます。
次に「レンコン」が注目されています。レンコンはハスの地下茎が肥大化したものですが、近年レンコンには炎症を抑える働きとともに、IgEを抑制することなどを通したアレルギーの予防効果が証明され、花粉症対策のサプリメントが開発されているほどです。またビタミンCも豊富で、強い抗酸化作用を発揮することでもアレルギーの予防に寄与しています。レンコンは同じ根菜類のダイコンやニンジン、ゴボウなどと煮たりすることで、たいへん体を温める料理となります・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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