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閲覧数順 2016年12月09日更新

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先の戦争について、体験世代の日本人はなぜか揃って

口を閉ざしました。学校や国もそれぞれの理由から

でしょう、子供たちに戦争について教えることを避けて

きました。

 

「戦争があったの?」「どこと戦ったの?」

真顔で質問する若者が出現するに至っては、悲劇を

通り越してもはや喜劇です。

歴史から学ばない、これは悲しい日本の現実です。

 

一冊の小説が、この状況を変える一条の光を投げ

かけています。

「永遠のゼロ」は、2006年に発表されて以来、徐々に

感動と共感の輪を広げています。

読者の多くは若者を含む戦後世代です。

 

     ◆      ◆      ◆

 

絶望的な戦いのなかで、「生きて家族のもとに帰る」

という約束を果たすため、最後まで生への執念を燃やし

続けた戦闘機乗りの話です。

 

フリーターに甘んじている健太郎は姉と共に、特攻隊

で戦死した祖父のことを調べ始めます。

 

祖父、宮部久蔵はゼロ戦のパイロット。歴戦の勇士でした。

小説は、真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、ラバウルでの

航空戦、そして沖縄特攻戦、と太平洋戦争の主要な戦い

に参加した宮部の足跡をたどりながら、日本がいかに

あの戦争を戦い、敗れていったかを丁寧に描いて

いきます。

 

最後に、祖父を巡る謎が解き明かされる、この小説の感動

の結末が用意されています。

 

     ◆      ◆      ◆

 世代を越えて戦争を伝える物語が現れた、という感慨を

持ちました。 より多くの若者たちが、小説をきっかけにして

戦争について学ぶことを望みます。

 

まず事実を知ることです。そして考えて欲しいのです。

なぜこんな悲惨な戦いになってしまったのか。

なぜ日本軍は人間を粗末に扱ったのか。

なぜ軍部は独走したのか。

なぜ国民やマスコミはブレーキを掛けられずに流されて

いったのか。

 

歴史は繰り返す、といいます。

歴史から学ぶことは、人間の知恵を信じ、現在と未来を

よりよく生きることに繋がるはずです。

 

それにしても、あの戦争について誰も語ろうとしなかった

のはなぜだろうか。久しく疑問に思っていました。

あれだけの戦死者を出しながら。あれだけ不条理な目に

遭いながら・・・。

 

事実は逆なのでしょう。戦争を体験したひとびとにとって、

口に出して語るには余りにも悲惨な戦争だったから、と

思えます。

 

「永遠のゼロ」百田尚樹著 講談社文庫 

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