無縁社会~無縁死、3万2千人の衝撃 NHKスペシャル - 老後・セカンドライフ全般 - 専門家プロファイル

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無縁社会~無縁死、3万2千人の衝撃 NHKスペシャル

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現代都市社会

自殺率が先進国の中でワースト2位の日本。NHKが全国の自治体に調査したところ、ここ数年「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」など国の統計上ではカテゴライズされない「新たな死」が急増していることがわかってきた。なぜ誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなっていく人が増えているのか。「新たな死」の軌跡をたどっていくと、日本が急速に「無縁社会」ともいえる絆を失ってしまった社会に変わっている実態が浮き彫りになってきた。「無縁社会」はかつて日本社会を紡いできた「地縁」「血縁」といった地域や家族・親類との絆を失っていったのに加え、終身雇用が壊れ、会社との絆であった「社縁」までが失われたことによって生み出されていた。

まさに衝撃的な番組でした。無縁死、3万2千人。自殺に匹敵する人数の方々が毎年、引き取り手のないまま自治体で火葬・埋葬されているというのです。しかも番組の舞台は首都、東京。大都市の片隅で、数多くのお年寄りが人知れず亡くなっているというのです。番組では身元が分っても遺族はお骨を引き取らず、自治体により無縁墓地へ送られる様子が映されていました・・・

なぜこのような悲惨な出来事が起こっているのでしょうか?それは急速に発展した現代都市社会が原因の一つと考えられます。東京は戦後、移住してきた方々で占められています。その多くは日本の高度経済成長を担ってくれた方々です。しかし定年退職後、会社との縁(社縁)が切れると行き場を失ってしまいました。家族や親戚(血縁)が近くにいれば様子を見守ってくれますが、離婚や死別などから単身になると孤独な生活へ陥ります。都会は田舎のような近所づきあい(地縁)も乏しく、自ら働きかけないと周りと関わりなく暮らすことになってしまいます。

核家族・少子高齢化といった社会構造の変化がこれに拍車をかけています。国勢調査によりますと、15~64 歳の人口(生産年齢人口)は平成7年をピークとしてその後減少しています。15 歳未満の人口(年少人口)は昭和60 年以降減少しています。65 歳以上の人口(高齢者人口)は一貫して増加しています。この割合は世界最高水準に相当するそうです。

さらに、1960年と2005年を比較すると、大家族は31%から12%へ減少、単身者は16%から29%へ増加しました。さらに未婚率は30代男性で約30%以上、30代女性で約20%以上となり、少子化の要因として考えられます。そして一人暮しの高齢者(65歳以上)は400万人を超え、高齢男性の10人に1人、高齢女性の5人に1人が一人暮らしをしています。例えるならば、「サザエさん」のような大家族は「昭和」の昔話になってしまったのです。

このような都市の問題は、現代の日本にはじまったことではありません。18世紀、産業革命、以後、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ベルリンといった西欧諸国においても同様の現象が認められました。19世紀のイギリスでは、社会学者エンゲルスにより都市の繁栄の一方、そこで暮らす人々の貧しく厳しい生活状況が報告されました(「都市のもう一つの半分 the other half」)。

ドイツでは、ウェーバーが都市とは時代や場所を問わずその土地と関係を持たなかった人々により形成されると指摘しました。ジンメルは都市では地縁や血縁によりつながった第一次関係が弱まり、目的や機能で結ばれた第二次関係が強まると言及しました。人間関係は匿名性を帯び、互いの距離感が支配的になるとも分析しました。すなわち「よそ者」、「潜在的放浪者」により構成されるというわけです。

また、20世紀になりテンニースは人間の共同生活を二つに分類しました。一つは人間にもともと備わっている本質的な意志により人々が全人的に結びついた「ゲマインシャフト、家族・村落、中世都市が挙げられます。そこでは個性は共同体の中に溶け込んでいます。もう一つは思考を介した選択意志より人々が作り出した「ゲゼルシャフト」大都市や国家・世界が挙げられます。そこでは個性は個々人の中に保たれ、各人は合理的な思考により行動します。そして、テンニースは近代社会はゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの転換にあると指摘しました。

日本では倉沢や盛岡が共同体の生活様式を村落的・都市的とに分類しました。村落的生活様式」では、家庭の自給自足、村落での相互扶助を特徴とします。すなわち「自ら耕し、自ら食う」、冠婚葬祭、四季折々の行事を共にしたかつての伝統的社会です「都市的生活様式」では、日常生活から冠婚葬祭まで、あらゆることを金銭を対価として、専門業者に委託します。すなわち、赤の他人が、顔を会わせることなく、インターネットで注文する現代の都市社会です。こうして、都市化の進行により地域社会が消失し、いくつもの問題を生じることになったのです。

NHKではテレビ・ラジオの様々な番組、そしてこのwebサイトを通じて皆さんとともに「無縁社会」を考えていきたいと思います。それでは、都市化が進むにつれゲゼルシャフトが大部分を占め、「縁」や「絆」は失われていくばかりなのでしょうか。「無縁社会~無縁死3万2千人の衝撃」は、まさに日本のこの急激な変化を映像化した番組でした。これに対し、その後の番組では様々な対策や提案がなされました。

10月30日の番組では、「無縁社会」に対する様々な提言がなされました。「第4の縁」としてパーソナル・サポーターを配置し、寄り添い型の自立・人生支援を行う(湯浅誠氏、奥田知志氏)。おせっかい」の復活とし、支え合いマップを用いて、独居老人へ積極的介入を行う(結城康裕氏)。公的ヘルパーを介護保険に準拠した形式で派遣する(河合克義氏)。

いずれも、現代都市で失われつつある、「縁」や「絆」を改めて取り戻そうという試みです。社会学でいうと「ソーシャル・キャピタル」、人間関係や信頼関係による社会的な豊かさを高めようという活動に相当します。健康な若者ならば、この急激な環境の変化においても、インターネットや携帯電話を用いて、「ネットワーク」や「コミュニティ」を形成していますが、ひきこもりの若者や独居生活の高齢者には容易にできる行動ではありません。

そして、精神医療はその背景にあると想像される、若者の精神病、高齢者の認知症といった疾患に対し、適切な診断・治療を提供していかなければなりません。昨今の報告によると若者のひきこもりは100万人以上、高齢者の認知症は200万人以上に上るとも推定されています。

それには、従来の受動的に「待つ医療」のみでなく、時には積極的 (assertive) に出向く「訪問診療(往診)」が望まれます。現代都市、特有の「個人情報」や「プライバシー」には十分、配慮した上で、本人の治療意欲を引き出すような関係性をゆっくりと構築していけると良いでしょう。そして、必要とされる薬物および心理・社会的治療(心理教育・認知行動療法や就労支援)を提供し、新たな地域共同体、コミュニティへ導いていかれることが理想です。銀座泰明クリニックもこれらを念頭に、特に東京・都市部において一人で悩んでいらっしゃる方々へ有益なサービスを提供してまいりたいと思っております。

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