「自ら考え、行動する」、「自分で判断する」、「能動的にアクションする」など、望ましい社員像として自主性を重んじるという会社は多いと思います。ただ、「自分で判断して行動する人」を「組織的な動きが取れない人」と見る価値基準もありますし、総論で「自主性があることが望ましい」とは言っても、その程度は会社によって違いがあります。基本的にはその会社の尺度に応じて、自分で判断する、指示を仰ぐ、判断を委ねる、といったことを使い分けながら仕事をしていく事になるのでしょう。
中小企業の場合は、組織分掌や職務権限が確立できていないことも多いですから、自分の担当だけにこだわらずいろんな事に手を出して欲しい、関わって欲しい、仕事も課題も自分で見つけ出して取り組んで欲しいなど、より強く自主性を求められるように思います。また自主的な取り組みを促進するという目的で社員主導型の様々な仕組み、例えば社内の委員会活動、社員が幹事を務める各種社内行事などを行っている会社も多いと思います。
とても大切な取り組みではあるのですが、これを何年か続けているうちに、自主性を育む活動であったはずが、いつの間にか活動を強制する形になってしまっているケースを時々見受けます。作業指示だけ上から降りてくる委員会活動、社員旅行や飲み会の強制参加、などというものです。そんなルールは公式にはどこにもないのに、何となく不文律になっているような場合もあります。
こうなってしまうと自主性どころか、余計な事には参加したくない、関わりたくないという逆の心理になってしまいます。全くの逆効果です。「自分で何でもできる環境なのに、うちの社員は自分から動かない」などという経営者の愚痴を聞くことがありますが、もしかするとこんな状況になっているせいかもしれません。
もしもこのような傾向が見られたならば、一度本来の目的に立ち返る、つまり自主性を育むためにはどんな活動が望ましいのかを見直すということが必要と思います。
そもそもの趣旨を再周知するだけで良いかもしれませんし、おかしな不文律があればそれを取り払う必要があるかもしれません。活動自体は会社の意向に沿って「やらせる」ことなので、ある意味では強制ですが、本人が強制と感じるかどうかはそれとは別問題で、指示の仕方、説明の仕方、納得のさせ方にかかってきます。社員主導の活動という名目ゆえに、この辺りがおろそかになっていることが多いのではないでしょうか。
せっかくの社員の自主性を育む取り組みですから、一度原点に立ち返ることで、是非効果を上げる活動にして頂きたいと思います。
本年分の掲載は今回で終了いたします。新年は1月10日より掲載いたします。
それではよいお年をお迎えください。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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