本物のアンジェリカを求めてニオールへ - 洋菓子・和菓子 - 専門家プロファイル

塚本 有紀
フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
大阪府
料理講師

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対象:料理・クッキング

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本物のアンジェリカを求めてニオールへ

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 日本には本物のアンジェリカAngeliqueがないってご存知でしたか?

アンジェリカといえば、フルーツケーキの中に入っている、緑色に着色されたフキの砂糖煮のこと。お菓子を作る仕事をしていながら、これまでずっと興味が持てませんでした。それはおいしくないから!

しかし本当のアンジェリカがないってことは、日本のは「うそもの」ということに。ならばどうしても本物を見てみたい! そしてとうとうアンジェリカの産地として有名なフランス・ポワトー地方ニオールの街に行って来ました。 調べてみるとアンジェリカというのはセリ科の芳香植物であり、フキはキク科でまったくの別物。辞書には「強い芳香がある」と書かれていて、驚くことにその根は漢方でいう当帰のことなのだそうです。

パリからTGVで1時間ちょっと。ニオールの街で、お菓子屋さんをのぞき込んでみると・・・、アンジェリカ製品が次から次へと目に飛び込んできます。

まずはチョコレートのボンボン。マカロンにギモーヴ、アンジェリカのクリームをはさんだサブレ、そしてヴェリンヌverrine(グラスデザート)まで! 食べてみると、かすかな心地よい苦みがあります。万人にわかりやすい芳香ではないけれど、たしかに漢方に通じるような芳香があるのです。リキュールにも爽快な苦みがあり、ちょっと薬草酒のよう。

ほかにもあめ、キャラメル、ガレット、ジャム、クリーム、パート・ド・フリュイなどなど。そしてもちろん自家製のアンジェリカのコンフィ(砂糖煮)も。 こんなに製品があるなんて、ニオールの人たちはよっぽどアンジェリカを愛しているに違いありません。

昔から糖菓、香料だけでなく、医療にも使われていたらしく、消化不良、胃炎や腸炎、不眠、リューマチ、潰瘍にまで。消毒、強壮、鎮痛、解毒などなどにも。1430年のペストからニオール人を救ったとまで書かれているパンフレットもあり、そもそもアンジェリック(天使の)なんて素敵な名前は、昔は蛇の毒を解毒できると信じられていたからだそうです。

パリに戻れば、材料屋さんなどでアンジェリカは普通に手に入りますが、フルーツケーキ以外でやはりあまり使われているのを見たことがありません。パリでは甘草(reglisse)やトンカ豆(tonka)などというものがお菓子の風味として流行っているのですから、そのうちアンジェリカも流行ってもよさそうなものなのに。そうすればニオールの人たちはきっと大喜びです。

そして最後に本物のアンジェリカのコンフィを食べてみました。

「これって・・・、フキ!?」

製品とは違い、アンジェリカそのものの味は「フキ」にとてもよく似ているのです。もちろんもっとはっきり強い芳香だけれど、でも食感といい、風味といいフキなのです。 本当に想定外ですが、結局のところ何千キロも旅して私が行き着いた結論は・・・。

フキをアンジェリカの代用に思いついた最初の日本人はとても偉い! でした。

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