結論から言うと、対象者の“やる気”につながるかは運用次第で、マイナスに働く大きな危険性をはらんでいる、ということです。例えば評価されることによってお互いの信頼関係が確認され、自分の課題も認識できたとすれば、“やる気”につながりますが、ただ欠点を指摘するダメ出しのようになった場合など、“なにくそ”とでも思って前向きに捉えられれば良いですが、必ずしもそうはいきません。
もちろん一般的な人事考課でも同じ危険性はあるのですが、例えば若手の部下のように人を評価することに慣れていなかったり一方的な不満を抱えているような場合、他部門の同僚で評価できるほどの接点がない場合など、評価の客観性を歪める要素が通常の人事考課より格段に大きくなります。このあたりを配慮した制度にしたり、評価訓練をするなど工夫して運用している会社ではうまく機能していますが、360度評価を行ったことでかえって社内の人間関係を阻害してしまったと言う話も聞きます。特に周囲すべてから評価される管理者のストレスは相当のものです。導入するのであればより細かな配慮が必要であると思います。
一連の教育改革で先生たちの評価に360度評価を適用するという話がありますが、様子を聞いているとどうも選別の要素が強く、ダメ出しをしてその人を排除するという考え方のように見えます。選別して排除することで事態は良くなるのか・・・・。私はとても疑問に思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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