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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後の自明性判断基準(第6回)

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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後の自明性判断基準(第6回)
2010KSRガイドライン

 河野特許事務所 2010年12月28日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 (b)第2の争点

 本発明は、第2の改良点として、汚染防止のための密閉部を有している。これに対し第3先行技術及び第4先行技術は南京錠における密閉部を開示している。参考図9は第3先行技術の図8及び図9、並びに、第4先行技術の図8及び図9である。

 

参考図9 第3先行技術の図8及び図9、並びに、第4先行技術の図8及び図9

 南京錠はトレーラの連結装置とは異なる分野であるが、これら第3先行技術及び第4先行技術を組み合わせて、本発明が自明といえるか否かが争点となった。

(iv)CAFCの判断

(a)争点1

 第1先行技術のピン型においても異なる開口サイズへの適応性が求められている。CAFCは、連結レシーバにおいて開口サイズが異なる点は、公知の課題であるから、同一課題を有する第1先行技術と本発明とは同一技術分野に属すると認定した。従って、当業者が利便性の向上及びコスト低減を図るべく、バーベル型である第2先行技術をピン型である第1先行技術に組み合わせて本発明を完成する動機が存在することから、自明であると判断した。

(b)争点2

 CAFCは、第3先行技術及び第4先行技術が示すように、汚染を防止するための機構は南京錠において常識であることから、本発明は自明であると結論づけた。

 第4先行技術はロック頭部をカバーする外部封止部材を有する南京錠を開示している。CAFCは、本発明に係るクレームがロック機構を特徴としていることから、南京錠である第3先行技術及び第4先行技術についても同一の傾注分野(Field of Endeavor)に属すると判断した。

 またCAFCはたとえ密閉南京錠が同一傾注分野に属さないとしても、密閉機構の汚染を防止するという課題に対し、第3先行技術及び第4先行技術を用いることは適正であると述べた。すなわち、KSR事件において最高裁は、類似技術範囲は広く解釈されると述べており、また密閉により汚染からロック機能を保護することは公知の手段だからである。

 CAFCは、クレームの構成要素はこれらの認識された機能に従って実装され、第3先行技術及び第4先行技術を組み合わせることで、予想どおりの機能を保持することから、本発明は自明であると結論づけた。

(v)まとめ

 類似技術の範囲は広く解釈され、解決課題に関連する常識も引例に含まれる。ただし、審査官は、常識を用いて自明と結論づける場合、十分な理由付けが必要となる。KSR事件において最高裁は、米国特許法第103条の拒絶をサポートするための分析は明確でなければならないと述べている。すなわち自明を理由とする拒絶は、単に推論による言及だけでは維持することはできず、法的根拠として合理的基盤を伴った明確な理由付けが必要とされている(MPEP § 2141 III)。 

(第7回へ続く)

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