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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介:ソフトウェア特許に対する共同侵害 (第1回)
~黒幕が管理・指示を与えたか否か~
Golden Hour Data Systems, Inc.,
Plaintiff-Appellant,
v.
emsCharts, Inc., et al.,
Defendant-Cross Appellants.
河野特許事務所 2010年11月23日 執筆者:弁理士 河野 英仁
1.概要
方法発明についての特許権侵害は、被告のイ号方法がクレームに記載された全てのステップを充足する場合に、成立するのが原則である。では、被告Aのロ号方法がクレームに記載された一部のステップのみを実行し、残りのステップを被告Bのハ号方法が実行する場合、被告A及び被告Bの共同侵害としてロ号方法及びハ号方法に対する差し止め請求が認められるであろうか。
本事件における特許は、ヘリコプターを用いて患者を病院に搬送し、医療情報を収集し課金を行う方法である。被告Aのソフトウェアは本特許方法の一部の処理を実行し、被告Bのソフトウェアが残りの処理を実行する。被告Aのソフトウェアと被告Bのソフトウェアとは統合ソフトウェアとして販売された。
原告は被告A及び被告Bの共同侵害が成立すると主張した。CAFCは、被告Aの被告Bに対する管理または指示があったとはいえないとして、原告の主張を退ける判決をなした。
2.背景
(1)特許発明の内容
Golden Hour Data Systems(以下、原告という)は「統合緊急医療搬送データベースシステム」と称するU.S. Patent No. 6,117,073(以下、073特許)を所有している。073特許はヘリコプターを用いた緊急医療搬送に関する情報管理システム及び方法に関する。
参考図1 統合緊急医療搬送データベースシステムの構成図
参考図1は統合緊急医療搬送データベースシステムの構成図である。搬送及び医療サービスを行う業者は、輸送人員の派遣、患者の治療(臨床サービス)及び請求を行うために多くのデータを収集・追跡する必要がある。073特許は派遣、臨床サービス及び請求データを統合したシステムである。
派遣モジュール、臨床モジュール、管理モジュール及び請求モジュールを統合することにより、緊急医療チームの派遣、チームの事故現場までの追跡、臨床診断・治療管理、及び、患者への請求を包括的に行う。
(2)クレームの内容
クレーム1,6-8,10,12-14はシステムクレームであり、クレーム15-22は方法クレームである。うちクレーム1,10及び15は独立クレームである。
システムクレーム1は派遣及び課金データを統合することを規定している。クレーム1*1は以下のとおり。
1.患者事変追跡用のコンピュータ化された統合データ管理システムにおいて、 派遣に関する搬送追跡情報は記録されており、
緊急搬送クルーにより緊急医療が要求される患者事変特有の緊急搬送クルーを派遣することの可能な第1モジュールと、
前記第1モジュールから情報を受信することが可能であり、患者に適切に搬送費を含む前記患者事変に係る料金を請求することが可能な第2モジュールとを備える。
方法クレーム15は派遣及び医療サービスデータを統合することを規定している。クレーム15*2は以下のとおりである。
15.患者が遭遇した履歴を生成するコンピュータ化された方法において、
緊急搬送クルーの派遣に関するフライト情報を収集するステップと、
緊急搬送クルーにより緊急医療が必要とされる患者事変に関する臨床の遭遇から患者情報を収集するステップと、
患者の臨床遭遇を示す遭遇履歴を生成するために、前記フライト情報とともに患者情報を統合するステップとを含む。
(第2回へ続く)
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