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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈(第5回)

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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈 (第5回)

~方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか~

OBE工業有限公司(ドイツ)
再審申請人(一審原告、二審被上訴人)
v.
浙江康華眼鏡有限公司(中国)
被再審申請人(一審被告、二審上訴人)
 
河野特許事務所 2010年11月12日 執筆者:弁理士  河野 英仁

5.結論
 最高人民法院は、北京市高級人民法院がなした判決に誤りはないとして、再審請求を却下する裁定を下した。
6.コメント
 本事件は、2009年度における5重要発明特許訴訟の一つに選定された。方法発明における各ステップの順序につきどのように解釈をすべきか、また、均等論がどのように適用されるかが判示された興味深い事件である。
 実務上方法発明について請求項を作成する場合、工程順序に従って請求項の各ステップ(構成要件)を順次記載していく。しかしながら、特定のステップについて順序が前後しても良い場合、発明者にその旨を確認すると共に、実施例に順序の異なる形態を記載しておくことが重要となる。また実行順序の異なる請求項をも併せて作成しておくことが望まれる。
判決 2009年8月26日
以上
【注釈】
*1 (2002)一中民初字第5048号判决
*2 (2006)高民?字第1367号民事判决
*3 最高人民法院民事裁定書(2008)民申字第980号
*4 OBE工業HP(
http://www.obe.de/optik/home.html)より(2010年8月15日)
*5 中国では、人民法院において特許の無効を主張することはできず、復審委員会に無効宣告請求を行う必要がある。専利法第45条は無効宣告請求について規定している。
専利法第45条 国務院特許行政部門が特許権を付与することを公告した日から、いかなる機関又は組織又は個人もその特許権の付与が本法の規定に合致しないと認めたときは、その特許権に対して特許審判委員会に無効審判請求を提起することができる。
*6 第7135号無効宣告請求決定
*7 均等論の適用要件は2001年に公布された最高人民法院「特許紛争事件の審理に適用する法律問題に関する若干の規定」(法釈(2001)第20号)第17条に規定されている。第17条の規定は以下のとおりである。
第17条
 ここで均等の特徴とは記載された技術的特徴と基本的に同一の手段をもって、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を達成し、かつ当該分野の通常の技術者が創造的な労働を経ることなしに十分想到できる特徴をいう。
*8 民事訴訟法第179条第1号乃至第13号に規定する13の要件、または、裁判官による汚職・収賄行為が存在する場合、再審を請求することができる。13要件は以下のとおりである。
第1号 新たな証拠があり、原判決、裁定を覆すのに足りる証拠
第2号 原判決、裁定の事実認定に主たる証拠が不足している場合
第3号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が偽造された場合
第4号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が質証を経ていない場合
第5号 審理案件に対し必要な証拠について、当事者が客観的原因により自身で収集できない場合に、書面により人民法院に調査収集を申請したが、人民法院が調査収集していない場合
第6号 原判決、裁定について法律適用に確かに誤りがある場合
第7号 法律の規定に違反し、管轄に誤りがある場合
第8号 審判組織の組成が非合法である、あるいは、法によれば回避すべき裁判員が回避しなかった場合
第9号 訴訟行為能力の無い者が法定代理人を経ることなく訴訟を代行し、或いは、訴訟に参加すべき当事者が、本人或いは訴訟代理人の責めに帰すことができない理由により訴訟に参加していない場合
第10号 法律の規定に違反し、当事者の弁論の権利を剥奪した場合
第11号 呼び出し状による召喚を経ることなく欠席判決をなした場合
第12号 原判決、裁定に遺漏があり、或いは、訴訟請求範囲を超えている場合
第13号 原判決、裁定を作り出す拠り所となる法律文書が撤回または変更された場合
*9 中国においても同様に禁反言の法理が存在する。
司法解釈[2009]第21号第3条及び第6条
第3条 人民法院は、請求項について、明細書及び図面、特許請求の範囲の関連する請求項、並びに特許審査の包袋を用いて解釈することができる。請求項の用語について明細書に特別な限定がある場合、その特別な限定に従う。
第6条 特許出願人、特許権者が特許授権または無効宣告手続において請求項、明細書について補正または意見陳述することによって放棄した技術方案について、権利者が特許権侵害紛争案件において改めてこれを特許権の保護範囲に加えた場合、人民法院はこれを支持しない。

 

                                           (第2回へ続く)

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