(続き)・・ガンのような病気になると話はもっと深刻です。末期ガンと診断されれば手術は不可能で、抗ガン剤くらいしか打つ手はなく、西洋医学ではほぼお手上げの状態です。そのような状態でも、東洋医学や自然医療の範疇では何らかの対応策があるもので、中には顕著な効能を示すものも少なくありません。ところが病院では基本的にそのような治療法の存在を認めておらず、紹介状を書いてくれることは期待できません。従って患者や家族は自己責任でそのような治療法を行なう施設を探さなければないのです。
まだそれほど深刻な状況でなく、様々な不定愁訴はあるものの、検査では異常が見つからない段階でも、東洋医学ではある一定の対応策を講ずることが可能です。そのような状態は東洋医学では「未病」と言われ、今のところ病気ではないものの、将来的に病気になる恐れがある、という状態です。この状態は西洋医学の手法では打つ手が少ないのですが、もし放置した場合には、本当に病気になってしまう可能性があります。従って東洋医学は、病気の「予防」という観点でも威力を発揮するのです。
筆者の経験でも、自分自身がひどい腰痛に悩まされた時期がありましたが、その時に鍼灸を勧められて受けた結果、10回近く通ってすっかり改善しました。そのことを友人の整形外科医に報告したところ、「そんな治療はまやかしだ!」といって取り合ってもらえませんでした。また知り合いの女性が重症のアトピーと自律神経失調に苦しんでいたため、整体治療とアロマセラピーを行なったところ、10年来のアトピーをはじめ様々な症状がすっかり良くなったのには本当に驚きました。
そのように様々な慢性疾患や難病、不定愁訴、病気の予防などに効能を期待される東洋医学ですが、もちろん弱点もあります。それは急性疾患や外傷といった救急医療には不向きだ、という点です。また早期ガンの確実な治療にも向きません。早期ガンが見つかった時には手術で患部を切除するのが一番確実で安心ですし、心筋梗塞のような急性の重症疾患や、重大な交通外傷などが発生した場合には、的確な検査と画像診断、それに薬物や医療機器を駆使した西洋医学的な診療が求められます。
従って、急性疾患や外傷などに対しては西洋医学を主体として提供する一方、慢性疾患や心身症、ストレス性疾患などに対しては東洋医学をベースとして必要に応じ西洋医学も用いる、といったスタンスが必要です。最も大切なことは、一人の患者に対して、ある時は西洋医学、ある時は東洋医学といった具合に、一連の流れの中で必要かつ有効な医療サービスを提供することにあります。つまり患者が西洋医学はあの病院、東洋医学はこの病院、といった感じで右往左往するような状況は不自然です。
ところが実際には、西洋医学は病院や医院、東洋医学は整体院や鍼灸院、接骨院などで行なわれており、相互の交流や患者紹介はごく限定的にしか行なわれていないのが実情です。このような仕組みは早急に改善して、我々の身近な病院で西洋医学と東洋医学の双方を提供し、患者は医療的な必要性と好み、予算に応じて選択できるようにしなければなりません。しかしながらそれは保険診療や医学教育なども絡む話になるので、おいそれとは改革が進まないと予想されます。
そのような現状のもとでは、患者は自らと家族の健康を守るために、西洋医学、東洋医学の双方に対する一定の「見識眼」をもち、賢い選択と行動をする必要があります。特に東洋医学に関しては、世間的にかなり多くの誤解と偏見が見受けられるため、一般市民としても最低限の正しい知識と考え方を身につけることが望まれます。それでは、東洋医学に関する正しい知識と考え方は、いったいどのように身につければよいのでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
あなたの自然治癒力を引き出し心身の健康づくりをサポートします
病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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