(続き)・・そのような各種の病気に対して、上述のような現代医療は効果がないのでしょうか。確かに、例えばガンに対する手術や抗がん剤投与によって、ガンを除去したり縮小させることは可能です。しかし手術の後遺症や抗がん剤の副作用によって健康を害してしまう例が多いほか、再発や転移の予防には効果がなく、ましてや他の病気を予防する力はありません。ガンになるのには体質や生活習慣など根本的な原因があるはずですが、手術や薬はそれらを解決することができないのです。
さらに明らかな病気がさしあたって見つからないものの、いくつもの体調不良を訴える患者はいつの世にも居るものですが、最近はストレス社会という事情もあって、そのような患者がとみに増えてきました。西洋医学的に表現すると、「不定愁訴」という一連の体調不良です。例えば頭痛、腰痛、不眠、足の冷え、イライラ、便秘、食欲不振、生理不順、息苦しさ、のどの違和感、手足のしびれ、耳鳴り、疲れが取れない、動悸、めまい、肌荒れ、などと枚挙に暇がありません。
このような状態の患者に対して、各種の血液検査やレントゲン撮影などをしても目立った異常は見つからないもので、たいていは「自律神経失調症」とか「原因不明の痛み」、あるいは「心身症」などといった病名が付けられ、精神安定剤や鎮痛剤などの薬物を処方してお茶を濁しているのです。およそ西洋医学というものは、病気の原因を突きとめて、それに対する治療を行なおうとしますが、検査で明らかな異常が発見されず、はっきりした病気の原因が見つからない場合には、意外にも無力なのです。
そのような現状もあって、国民の間には「医療不信」の感情が拡がってきています。病院に行って医師に話を聞いてもらい、診断を受ければ何とかなる、といった希望を持っている人は多いのですが、現実には診察室で満足に話も聞いてもらえず、薬だけをたくさん渡されて帰ってくるのです。その薬が病気や症状に対して効果があればよいのですが、多くの場合は表面的な症状を一時的に抑えるだけで、根本的には解決になっておらず、患者の心には医療に対する不信感が芽生えることになります。
そのように西洋医学が、慢性疾患やストレス性疾患、不定愁訴などといった現代特有の健康問題に対して、力を発揮しきれない理由はどこにあるのでしょうか。それは一つには、西洋医学が「病気」ばかりを見ているためではないかと考えられます。具体的には、人間を「臓器」単位に分析し、検査結果や画像情報をベースに病気の診断をします。従って、目に見える明らかな病気や異常が存在する場合には威力を発揮しますが、原因があいまいな場合や複数にわたる場合には、そうとは限りません。
そこで病気の診療や予防、健康増進などの分野に於いては、「人間そのもの」を全体として観察し、分析する考え方がどうしても必要となってきます。つまり人間が病気になる原因として挙げられる体質、環境、心理、生活習慣などを包括して取り上げ、原因となっている要素を抽出して解決に導く、といった考え方であり手法です。実はそのような類の考え方、手法は紀元前の昔から世界各地に存在していました。これらは総称して伝統医学とか、あるいは民族医学などと呼ばれています。
この中にはインドのアーユルヴェーダ医学やイスラム圏のユナニ医学、ラマ僧を中心とするチベット医学、ヒポクラテスらによるギリシア医学など多数ありますが、日本など東アジア地域に大きな影響をもたらし、現代に於いて最も存在感があるのは、何といっても古代中国に始まる「東洋医学」といえるでしょう。東洋医学は日本固有の呼称で、「中国伝統医学」とか「中医学」などとも呼ばれています。日本には遣唐使の時代から断続的に輸入され、日本の伝統医学の一つの柱になってきました・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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