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対象:特許・商標・著作権
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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈
~方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか~ (第4回)
上海麗雨光電有限公司
上訴人-原審被告
v.
鶴山麗得電子実業有限公司
被上訴人-原審原告
河野特許事務所 2010年11月9日 執筆者:弁理士 河野 英仁
争点2:イ号方法は、技術特徴「ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し」と同一または均等ではない
最高人民法院は、請求項、明細書、図面及び審査経過を総合的に勘案し、イ号方法は「ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し」と同一または均等ではないと判断した。
請求項における切断ステップは単に「ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し」と規定するのみで、ヒンジ部材が金属帯に対し分離しているか否かを記載しておらず、権利範囲がどこまで及ぶか不明確な記載となっている。
最高人民法院は、専利法第59条
「発明又は実用新案特許権の権利範囲は、その請求項の内容を基準とし、明細書及び図面は請求項の内容の解釈に用いることができる。」
を挙げた上で、請求項中に意味の曖昧な技術用語が存在する場合,当業者の観点から,明細書及び図面の記載に基づき当該技術用語に対し解釈を行うことができ,これをもって明確に特許権の保護範囲を確定することができると述べた。
明細書の記載に基づけば,特許発明の目的はバネヒンジの経済的な制作方法を提供することにあり,かつ部品の組み立て及び搬送を改善し,良好な経済効果を達成することである。
明細書及び図面には、切断ステップにおいて、金属带から完全に切断するという記載は存在せず,また、切り離したヒンジ部材の未加工品(丸め加工、孔開けが行われていない状態)に対し以降の加工を行う技術内容も存在せず,さらにはこれに関連する技術的な示唆も存在しない。
最高人民法院は,明細書及び図面に記載の技術内容に基づけば,
“ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断(切割)し、”
の具体的意味は当業者であれば、
「金属带を切断することにより,金属带上にヒンジ部材を加工するのに用いる区域を形成し,当該区域は依然として金属带の一部分であり,かつ、形状はヒンジ部材の外形に近似すること」を意味すると述べた。このように金属帯から分離しないことにより、コストを低減し、アライメントを不要とし、バネ部材、ロッキング部材の組み立て及び部品搬送を容易にし、結果的にバネヒンジの経済的加工を可能とするものである。
さらに最高人民法院は原告が審査過程において、以下のとおり意見を述べた点に着目した。
「“ヒンジ部材が金属带に対して連接され、かつ、予め定めた位置に存在する状態で,ヒンジ部材に対して押し抜きまたは変形を行うことにより、バネ部品をヒンジ部材上に装着し、バネヒンジ部品を装着する方法を改善することができる。」
以上の意見に基づけば、原告は審査過程において、明確にヒンジ部材が金属带に連接されている状態で、ヒンジ部材に対し加工を行う必要があることを主張している。以上の審査経過における意見に基づけば、請求項1の“ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し”は依然として金属带の一部分であると認定でき,当該区域はいまなお金属带に対し分離していないことを意味する。
最高人民法院は、侵害訴訟において,審査過程における意見陳述を無視し、ヒンジ部材を金属带から完全に分離した技術方案をも特許権の保護範囲に属するとの主張を認めるべきではないと判示した*9。
以上のとおり、請求項、明細書、図面、審査過程において提出した意見書に基づけば,請求項1中の“ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し”は切断によってもヒンジ部材は、依然として金属带の一部分であり,金属带から分離していないことを意味するといえる。
このように、イ号方法は請求項1に対して時代遅れの生産加工技術にすぎず、両者が採用する技術手段には実質的な差異が存在し、実現する機能も相違し、イ号方法はまた請求項1が奏するバネヒンジの経済的加工を実現することができず、ヒンジ部材のアライメント、部品の組み立て・運搬の改善等の有益な効果をも奏することができない。以上の理由により、最高人民法院は、イ号方法は請求項1中の”ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し”と同一または均等の技術特徴を具備せず、イ号方法は特許権の保護範囲に属さないと判示した。 (第5回へ続く)
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