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対象:特許・商標・著作権
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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈(第3回)
~方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか~
OBE工業有限公司(ドイツ)
再審申請人(一審原告、二審被上訴人)
v.
浙江康華眼鏡有限公司(中国)
被再審申請人(一審被告、二審上訴人)
河野特許事務所 2010年11月5日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(4)北京市高級人民法院の判断
北京市高級人民法院は均等侵害と判断した北京市第一中級人民法院の判決を取り消した。
北京市高級人民法院は、明細書の記載に基づけば、請求項1に係る方法は、ヒンジ部材を金属带から分離しないことを前提とするものであり、かつ、請求項に記載された順序通りに実行することで効果を奏するものであると認定した。
これに対し、イ号方法は、まずヒンジ部材を金属帯材料から押し抜いて切り離し、切り離されたヒンジ部材の凸肩を丸く加工し、その後孔開けを経て完成するものである。北京市高級人民法院は、イ号方法は先に金属帯からヒンジ部材を完全に押し抜いて切り離すことから、金属帯に連接されるよう所定領域を切断し、金属帯に連接された状態で押し抜きを行う請求項1とは同一でも均等でもないと判示した。
原告は北京市高級人民法院がなした非侵害との判決を不服として再審請求*8を行った。
3.人民法院での争点
争点1:方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか否か?
請求項に係る発明方法とイ号方法との順序が相違する場合に、どのように権利範囲を解釈するかは、専利法、専利法実施細則及び司法解釈のいずれにも規定されていない。方法の順序が相違する場合にどのように権利範囲を解釈すべきかが争点となった。
争点2:イ号方法は、技術特徴「ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し」と同一または均等といえるか否か?
請求項には、「ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し」と広く記載されているのみであり、金属帯との関係は全く定義されていない。イ号方法が請求項の当該技術特徴と同一または均等といえるか否かが争点となった。
4.人民法院の判断
争点1:方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序どおりに解釈すべきである
最高人民法院は、請求項1に係る発明の権利範囲は、各ステップの順序に関わらず、いかなる順序でも権利範囲に含まれるという原告の主張を退けた。
最高人民法院は、方法発明の請求項中、各ステップの順序を意図的に定義している場合、当然方法発明の権利範囲は、定義された順序どおりに限定されると述べた。しかしながら、最高人民法院は、本事件の如く請求項において各ステップの順序を定義していないからといって、どのような順序でも権利範囲に含まれることにはならないと述べた。
最高人民法院はむしろ、請求項、明細書及び図面を総合的に勘案し、当業者の観点から、方法発明の順序がどのように定義されるかを検討しなければならないと述べた。
請求項1に記載の4つのステップに基づけば,金属帯の提供が最初に行われることに争いはない。続く切断ステップで金属带上からヒンジ部材の外形とほぼ一致する区域が切断される。明細書及び図面の記載に基づけば,外形部分は「凸肩9の基本形状を形成する部分」及び「その後ヒンジ孔15が開けられる部分」である。
押し抜きステップは切断ステップにより形成された「凸肩9の基本形状を形成する部分」に対して押し抜きを行うものである。孔開けステップは切断ステップにより形成された部分にヒンジ孔15を開けるものである。
このように、明細書には、切断→押し抜き→孔開けの順序しか記載されておらず、切断の前に押し抜きを行っても良いとの技術内容(押し抜き→切断)は全く開示されていない。最高人民法院は、押し抜きと、孔開けの順序とは交換可能であるが、明細書の記載からは、先に押し抜き、後に切断したとしても発明の目的を達成できず、また同一の技術的効果を奏することはできないと述べた。
以上の理由により、請求項1に係る方法発明のステップの内、切断ステップ、及び、押し抜きステップはこの順序に限定解釈され、当該順序の異なる方法も権利範囲に含まれるという原告の主張は退けられた。
(第4回へ続く)
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