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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈(第1回)

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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈 (第1回)

~方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか~

OBE工業有限公司(ドイツ)
再審申請人(一審原告、二審被上訴人)
v.
浙江康華眼鏡有限公司(中国)
被再審申請人(一審被告、二審上訴人)
 
河野特許事務所 2010年10月29日 執筆者:弁理士  河野 英仁

1.概要
 中国における発明のカテゴリーは装置発明と方法発明とに大別される。方法発明においては、発明に必須の工程・ステップを記載する。方法発明について特許権が成立した場合、その権利範囲は、その請求項の内容を基準とし、また明細書及び図面を請求項の内容の解釈に用いることができる(専利法第59条第1項)。

 方法に係る請求項に記載した各ステップをイ号方法が全て具備する場合、特許権侵害が成立する。しかしながら、方法請求項に記載された各ステップの順序と、イ号方法の各ステップの順序が相違する場合に、当該イ号方法が特許発明の技術的範囲に属するか否かが問題となる。

 第一審である北京市第一中級人民法院は順序の異なるイ号方法は請求項に係る発明に対して均等であり、特許権侵害が成立すると判断した*1。これに対し第二審である北京市高級人民法院*2及び再審を行った最高人民法院は請求項、明細書、図面及び審査経過に基づき、請求項に係る方法発明は記載されたステップの順序どおりに限定解釈すべきであり、均等侵害は成立しないと判決した*3


2.背景
(1)特許の内容
 OBE工業有限公司(以下、原告という)は、1996年4月24日、中国知識産権局に発明の名称「バネヒンジの製造方法」とする発明特許出願(出願番号96191123.9)を行い、2001年10月24日に特許権(以下、123特許という)が付与された。

 請求項1の内容は以下のとおりである。
1.バネヒンジの製造方法であり、ヒンジは少なくともケーシング(3)、ヒンジ部材(11)及びバネ(7)により構成され、以下のステップを含む、
 ヒンジ部材(11)を形成するのに用いる金属帯(481)を提供し、
 ヒンジ部材(11)外形にほぼ一致する区域を切断し、
 ヒンジ部材(11)の凸肩(9)を形成すべく押し抜きにより円形部分を形成し、
 ヒンジ部材(11)のヒンジ孔(15)を開ける。

 参考図1はヒンジ部材11の製造工程を示す説明図であり、参考図2は完成したヒンジ部材11を組み込んだバネヒンジを示す断面図である。




参考図1 ヒンジ部材11の製造工程を示す説明図




参考図2 完成したヒンジ部材11を組み込んだバネヒンジを示す断面図

                                           (第2回へ続く)

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