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秋葉 忠夫
秋葉 忠夫
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田中 伸裕
田中 伸裕
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中古の住まいは本当に「お得」なのか

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建築的 シックハウス・シックライフ

2010.03.28

先日テレビ番組で中古の住まいが特集されてました。テレビの言うことを鵜呑みにする人はそんなに居ないと思いたいけれど、気になった点をいくつか書いておきます。

お得な中古に人気が集まっている、
という見方が紹介されていました。グローバル経済崩壊の流れからという文脈のようです。たしかにマンションも建売り住宅も、新築よりは中古がお得です。新築はデベロッパーや不動産会社など、建主業者の利益がしっかり載せてある分、本当の価値より価格設定が高いのです。中古市場での取引価格こそが、市場の評価・価値だと考えるべきでしょう。中古でまず気をつけるべきは1981年の新耐震基準以降かどうかです。建築された時期が1981年(~83年ごろ)以前であれば耐震性能が著しく劣るため、大地震で命を失う危険すらあります。キッパリと言います、「お得だから」という理由で買うような物件ではありません。

耐震補強済みや新耐震基準なら安心か、
と言うとそうでもありません。大地震でペシャンコにならなくても、全壊・半壊の認定を受けるような壊れかたは充分に有り得ます。「さてこの建物を、高い費用を掛けて直すか、壊して処分するか、怖いけどこのまま使うか」の判断があります。マンションの場合は住人みんなで建物を所有していますから、意見が割れて5年も10年も危ない建物のまま暮らすことになったり、所有権の放棄もしたくてもできなかったり、ということが実際に起こっています。大地震には遭わなかったとしても、老朽化・寿命をどう見極めるかはこの先必ず発生する問題と前々から言われていました。マンションの想定寿命は当初の100年から60年→50年と寿命の評価が低くなってきています。ちょうどそろそろ初期の分譲団地が建替え寿命の時期に入っていましたから、社会問題として出てくることでしょう。(この日本のことですからたぶん法整備も後手後手でされていくのでしょう)
どうでしょう、それでも中古マンションはテレビが言うようにお得だと思いますか?

問題を先送りに
という意味では築浅の物件ならまだマシかも知れません。ただし戸建住宅の場合、寿命の平均は26年です、現在の統計では。寿命を越えた木造に多少の耐震補強を施したところで10年・20年補修いらずの延命になるとは思えません。70才を過ぎた老人にムリをさせるようなものですから。それに、そもそも経済成長期の建物はつくりが粗悪です。古い木造に現代的リフォームしてシェアハウスにする、リメイク着物のような感覚でカッコイイのかもしれませんが、建築はファッションではありません。最低限の耐震だけは確保しておいてほしいものです。

なぜ、こんなにまで「安全」に口うるさいのか、
それは「地震じゃ人は死なない、建物が人を殺しているのだ」という重い事実があるからです。阪神の震災を例にすれば、死者の約9割が建物・家具の倒壊による圧死、約1割が建物から逃げ出せなかった人の焼死なのです。そして大地震にあう確率は、東京を例にすれば30年以内70%、ここ長野県松本市では14%、阪神淡路の野島断層にあっては8%以下の評価でさえ発震しているのです。つまり多くの人が一生のうちに一度は大地震に遭い、その瞬間には建物内にいる確率が高く、今日もまだ大地震への備えをナメている人は、そのとき何かしらをきっと失い痛手を負うことになると予測できるのです。このままじゃ惨劇を繰り返すことが目に見えているから、テレビが言わないこともお伝えしなくてはと思うのです。

「現代」が抱えたいくつものバクダン
そのテレビ番組では、田舎暮らし支援としてまだ十分住める家を市役所が紹介するというのを採上げていました。東京からの若い家族がその建物に案内され、窓を開けてみると目の前には一面の水田が広がっている。「わぁー!」感動する家族。気持ちは分かります、分かりますが・・・。普通の農家さんはお仕事ですから、除草剤や殺虫剤などの農薬をしっかり散布するので、水田からはそれが絶えず蒸発します。家の目の前に水田や畑がある場合は、春から秋まで洗濯物は干せず、窓は開けらず、でも結局空気からは逃げられず・・・で、化学物質過敏症やアレルギーも悪化の可能性がグンと高まります。つまり私たちの暮らしは、快適な現代生活の裏にある負の遺産といつでもどこでも共にあるのです。

世界で共通、大地震の課題
ちょうどきのうBS世界のドキュメンタリーではすごくいい番組が放送されていました。『検証ハイチ地震 被害拡大のメカニズム』http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/100327.htmlというイギリスのドキュメンタリー、これはぜひみなさんに紹介したいです。タイトルにはハイチとありますが、共通して世界中の都市が抱えている現代特有の危機を分かりやすく解説し、しかも情報量も豊富で秀逸の出来です。こういうのを見て真実を知れば、いくら「お得」だろうとも命まで賭けてボロ住宅を選ぶなんて、日本人はどうかしちゃったんじゃないかと気付くのでは? と思います。
(録画したDVD、切手代だけご負担いただければ個人的にお貸しできます)

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須永豪・サバイバルデザイン 

人間らしい「サバイバル」ってなんだろう?

安心して寄り掛かれるおおきな木のような存在感と、ジャングルジムのような自由さと、楽器のような豊かな響きがある空間。そういうものを、木でつくりたい。

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