医療・介護サービス業の労務管理 - 人事労務・組織全般 - 専門家プロファイル

西川 幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営コンサルタント

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対象:人事労務・組織

羽田 未希
(社会保険労務士)

閲覧数順 2016年12月02日更新

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医療・介護サービス業の労務管理

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業種別労務管理のポイント 医療・介護サービス業の労務管理

1.労働時間管理

医療、介護の現場では、日をまたいで連続16時間などの長時間勤務を行うことが珍しくありません。この場合、たとえ8時間勤務を2日間にわけて行う場合でも、変形労働時間制を取らない場合は、8時間を超える部分について時間外割増賃金が必要になります。

このようなケースでは、1カ月単位の変形労働時間制で対処することが効果的です。1カ月単位の変形労働時間制とは、1カ月を平均して1週40時間以内の範囲であれば、1日8時間、1週40時間という労働時間の規制を超えて労働させることができる制度です。この制度で運用した場合は、合計労働時間が週平均40時間以内に収まっていれば、連続16時間労働であっても、原則として時間外割増賃金は発生しません。

同じ趣旨の1年単位の変形労働時間制は、製造業などで多く採用されていますが、1日の労働時間の限度が10時間と規定されています。連続10時間を超える労働時間を設定する必要がある医療・介護に係る労働時間制としては、採用することができません。

また、医療や介護の現場では、医師や看護師、介護に係わる職員が不足しており、長時間労働を余儀なくされている実態があります。業種にかかわらず、長時間労働と脳疾患、心臓疾患については、関連性があると判断されますので、時間外労働の長さによってはそうした疾患が労災認定される可能性があります。時間外労働が1カ月当たり45時間以上を超えると、長時間労働と発症との関連性が指摘され、80時間、100時間となるとその関連性が強いと判断されます。最近では、精神障害を発症する労働者も増加しており、これについても過重労働との関連が指摘されています。

長時間労働の緩和と、体調不良者に対して、医師による面接指導を受けさせる体制の整備が、医療・介護サービス業をはじめ、あらゆる業種で求められています。

2.残業代の支払い

労働基準監督署から病院に対して、医師の時間外労働に対して、時間外割増賃金つまり残業代の支払いが適切に行われていないとして、是正勧告がでることがあります。

医師であっても、労働基準法に規定する管理監督者の要件に当てはまらなければ、残業代の支払いが必要になります。その要件として、経営者と一体的な立場にあるか、出退勤について自由裁量権があるか、賃金等の待遇がその地位にふさわしい内容であるかが問われます。医師の場合、賃金等の待遇については十分であっても、経営者と一体的な立場にあるかどうかという点で、管理監督者の要件から外れる場合が多いと考えられます。

医師に対する残業代の支払いは、これまでほとんど問題にされてきませんでしたが、今回のケースをきっかけとして、行政の対応も厳しくなるでしょう。医師版の「名ばかり管理職」問題です。

医師の給与は、年俸契約が多いと思われますが、残業代を毎月定額で支払うという方法もあります。つまり、一定額の残業代を年俸額に含めて総額を決め、毎月支給する方法です。ただし、実際の時間外労働による残業代がこの金額を上回る場合には、その差額を支払う必要があります。

一方、現状の合計金額のまま、本給部分と残業代の定額払い部分に内容を区分けするのは、実質的に賃金引き下げ、すなわち労働条件の不利益変更となりますので、説明を尽くし、個別の同意を得た上で行うべきです。

また、医師については、雇用契約の内容や服務規律のあり方も他の職種とは異なるケースも多いため、医師専用の就業規則を策定することが望ましいと考えられます。

3.賃金のコントロール

医療・介護サービス業は、人事労務管理が非常にむずかしい業種であると思われます。

医師、看護師、薬剤師、介護に係わる職員など、複数の職種のスタッフから構成され、勤務時間も不規則かつ長時間になりがちです。

賃金体系も、労働市場において、職種別の相場ができあがっており、人材難を反映してその単価が高騰しています。ただし、介護に係る職種については、介護保険の制度上の問題もあり、相対的に低賃金となっています。

医師や看護師、薬剤師などは、時間単価も高いため、その専門職でなければできない業務に特化させることが重要なポイントです。そのために、職務分掌、やるべき業務、やるべきでない業務を明確にする必要があります。また、これらの専門職については、世間相場により採用した場合、既存の職員との給与逆転現象が起きてしまうことがあります。組織内の賃金が不整合になった場合、それを長期間放置しておくとモラールダウンにつながりますので、評価により降給を含めた賃金改定を行う評価制度・賃金制度を構築しておく必要があります。

また、世間相場も変化しますので、上がりすぎた賃金は、評価にかかわらず下げざるを得なくなる場合があります。不利益変更は、個別の同意なしにはむずかしい面がありますが、就業規則(賃金規程)へ「賃金水準が世間相場から著しく乖離した場合、引き上げ、引き下げを行うことがある。」等の規定を置くことが望ましいと考えられます。

これらの専門職の場合、職業柄プロ意識が強いので、賃金水準だけでなく、学べる機会が多いかどうかが採用、定着においてポイントとなります。適切な教育プログラムを設けることが、サービスレベル向上だけでなく、人事労務管理上も重要な要素となります。

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