- 森 友宏
- アペリオ国際特許事務所 - APERIO IP ATTORNEYS 弁理士・米国弁護士
- 東京都
- 弁理士
対象:特許・商標・著作権
- 河野 英仁
- (弁理士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
再発行出願(Reissue Application)は、特許に含まれるerrorの訂正を特許の発行後に求めるための出願である (35USC251, MPEP1411)。
要件
出願できる者
発明者のみが出願できる(発明者が死亡している場合やサインを拒否した場合は除く (37CFR1.42、37CFR1.43、37CFR1.47))
出願可能時期
特許発行後いつでも可能(ただし、クレームを拡大する場合は、特許発行から2年以内)
errorとは?
errorは、明細書または図面におけるもの、あるいは、クレームが広すぎるか狭すぎるため、特許の全部または一部が実施不能(inoperative)または無効(invalid)となるようなものをいう。(35USC251)
具体的には、以下のようなものが挙げられる。
・広すぎるクレーム
・狭すぎるクレーム
・不正確な明細書または図面の開示
・優先権の主張の欠落または誤り
・関連出願の参照の誤り
訂正できる範囲
Reissue出願における訂正は以下の条件を満たさなければならない。
・new matterではない
Reissue出願ではnew matterは追加できない。
・オリジナルの特許の開示範囲
訂正する内容に対して否定的な内容がオリジナルの特許に開示されていてはならない。
・放棄した範囲をrecaptureするものではない
例えば、出願人が熟考して先行技術を回避するために広いクレームをキャンセルして狭いクレームを選択したような場合には、これはreissue出願では訂正できない。一方、「発明のすべての範囲を代理人が理解していなかった」ことは、クレームを拡張することを正当化できるerrorであると一般的に考えられている。
「クレームを拡大する」とは?
これに関しては厳格に解釈される。オリジナルの特許は侵害しないが、新たなクレームを侵害するような装置又は方法が考えられるとき、新しいクレームは「拡大するもの」となり、発行の日から2年よりも経過した後には訂正することができない。[Tillotson, Ltd vs Walbro Corp., 831 F.2d 1033, 1037 n.2 (Fed. Cir. 1987)]
一方、正確に同じ文言を使用していない場合であっても、オリジナルのクレームとReissueのクレームの範囲が同じとなる場合もある。例えば、"12インチ"が"1フィート"となっている場合などである。
必要書類
・通常の出願と同様の書類
・オリジナルの特許についての放棄書
・訂正するerror(すべてである必要はない)を特定し、どのようにしてerrorが生じたことを説明し、errorがdeceptive intentなく生じたことを確約するdeclaration
・譲受人の同意書
料金
[2009年7月1日時点] (37CFR1.16)
・Basic Filing Fee : $330
・Search Fee : $540
・Examination Fee : $650
・オリジナルの独立クレーム数を超える独立クレームについて$220
・オリジナルのクレーム数を超え、かつ20を超えるクレームについて$52
審査
・Reissue出願は"Re"で始まるシリアルナンバーが付与される。
・Reissue出願の内容は'第三者も閲覧できる'。
・オリジナルのクレームから変更されていないクレームを含むすべてのクレームが審査される。したがって、再度審査されることにより、既にissueされた特許が無効であるとされる可能性がある。[Hewlett-Packad Co. v. Bausch & Lomb Inc., 882 F.2d 1556, 1563 (Fed. Cir.1989)]
効果
・オリジナルの特許はsurrenderedとなる。
・Reissue特許はその発行の日から権利行使可能となり、オリジナルの特許が満了するときに満了する。
・Reissue特許にオリジナルのクレームと実質的に同じクレームがある場合、それらのクレームはオリジナルの特許の発行の日から有効であったかのように権利行使可能である。換言すれば、オリジナルのクレームはsurrenderedとなるが、reissueの前後にかかわらず侵害に対する損害が評価される。
Intervening rights
・Reissueによりクレームは広くなり得るが、この場合にはintervening rightsが認められる。Reissueの前にオリジナルの狭いクレームを侵害していなかった商品を生産、使用、購入した人又は企業は、それが広いクレームを侵害することとなったとしても、その製品を使用し続け、それを他人に売ることができる。[BIC Leisure Prods., Inc. vs Windsurfing Int'l, Inc., 1 F.3d 1214, 1220-21 (Fed. Cir. 1993)]
・substantial preparationについてもintervening rightsが認められる。substantial preparationであるかどうかは、reissue前になされた投資と開始された事業とを考慮して決められる。例えば、新たに侵害品を製造するために工場内に投資された事業はreissue後であっても製造及び販売できるであろう。
その他関連
些細な書き誤りや誤植については、"Certificate of correction"により審査なしで修正できる。(35USC254-35USC255)
アペリオ国際特許事務所では、アメリカへの特許出願をはじめ各国への特許出願に関するご相談を承っております。
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