第2章 「カーキ色」は何色か - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第2章 「カーキ色」は何色か

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  1. 暮らしと法律
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連載「刑事法廷」
第1回

 今回から紹介する事件は、学生が警察官に暴行を加え、公務執行妨害罪で逮捕・起訴されたものです。この事件は、私が弁護士登録した直後に依頼され、初めて手掛けた刑事事件であることもあり、私にとって大変思い出深いものです。
 事件は1973年4月のある夜に起こりました。暴行を受けた警察官はM巡査、そして逮捕・起訴された学生はSです。M巡査によると、事件の経過は次のようなものでした。
 M巡査が都心の繁華街を警ら中、学生風の若者約20名がふざけて騒いでいるのを見かけました。やがて数名が道路標識を壊し始めたので、これに走って近づき、そのうちの1名の腕を掴み、交番へ同行しようとしました。すると周囲にいた仲間が3名割り込んできて2人を引き離してしまい、続いてこの3名と周囲の者とがM巡査を取り囲み、押し倒し、殴る蹴る、あるいは両手両足を持ち上げて引きずるなどの暴行を加えました。M巡査によると、この3名の中には真ん中で分けた長髪で「カーキ色」の肩章つき上着の男(以下「乙」とします)がおり、これがSだというのです。
 私は逮捕された直後にSに面会して話を聞きました。それによると、Sは事件当夜、飲み会をしていました。幹事だったこともあり飲み会が終わってから仲間より遅れて店を出たところ、既に仲間を含む大勢の若者が警官(M巡査)ともめていました。するとSの目の前で仲間の学生を警官が警棒で殴りつけて頭に怪我をさせたので、Sは警官に詰め寄って抗議したが、それだけであり暴行には加わっていない、とのことでした。

(次回へ続く)