(続き)・・その一方で、健常人が感染を防ぐ方法について述べます。比較的有効性が高いのは、人ごみにはなるべく行かない、という注意です。これは上述の感染者に関する注意点の裏返しで、要は感染者と健常者が近付かなければインフルエンザがうつる心配はないのです。職場や学校、買い物などはやむを得ないとしても、イベントやパーティー、旅行など不用不急のお出かけに関しては、少なくともパンデミックの時期には可能な限り避けた方がよいでしょう。
次に有効性が高いのは「手洗い」です。インフルエンザウイルスは基本的に飛沫感染しますが、ウイルスをたっぷり含んだ飛沫が手すりやドアのノブ、食器などに付着している場合、それに触ると手に多量のウイルスが付着することになります。その手で不用意に口や鼻、眼などを触ると、一気に感染の危険が高まります。従って何か物を触るたびに、こまめに手を流水で洗うことが必要となります。その場合、石鹸を用いて30秒以上洗うとより確実です。
それと関連して、やたらと手で顔を触らないようにすることも大切です。元々人間は猫と並んで顔をよく触る動物ですが、日本人は特にその癖があるようです。自分自身をビデオに撮って観察すると、いかに我々は頻繁に顔に手をやっているかに気付かされるものです。そのような行動様式が、鼻や口、眼を通してインフルエンザウイルスに感染する機会を増やしてしまっているので、日ごろから手で顔を触ることを控えるようにすることが大切です。
以上のような取り組みに比べれば有効性は明らかに落ちますが、マスクやうがいも併用する価値のある取り組みです。マスクは日本人が好んで用いる予防法ですが、米国政府なども「効果がない」と公言しており、残念ながら予防の上では確かに高い効果は期待できません。とはいえ不織布性のマスクを正しく装着すれば一定の感染予防効果は期待できるので、他の予防法を補強する形でマスクを用いる、という姿勢で臨みましょう。
うがいも日本人特有の習慣で、室町時代の頃から定着したとされています。うがいは喉に付着した痰や古い粘液を排除するための行為ですが、ウイルスを排除する効果はあまり期待できません。上咽頭や喉頭の辺りにはうがいの影響が及ばないからです。しかし口内やのどを幾分でも清潔に保つ意義はあることから、マスクと同様に、補助的な手段としては用いて良いものといえます。
次に感染防止のための環境整備も、疎かにできません。ドアのノブや手すり、家具、車のドアの取っ手、食器、窓のサッシなど、不特定多数の人が頻繁に触れるようなものは、定期的に掃除をすることが大切です。具体的には布巾などで拭くだけで良いのですが、消毒用アルコールや次亜塩素酸などを用いると、より感染防止効果が高くなります。また食器はもちろん文房具など日用品の共用は、可能な限り避けた方が無難です。
しかしながら以上のような感染予防対策の大切さは理解できても、実際にそれを漏れなく完璧にこなすのは至難の業です。それこそストレスの源となってしまい、心身ともに疲れ果ててしまうかも知れません。また仮に完璧にこなしたとしても、ウイルスが体内に侵入してくる可能性は決してゼロではありません。それではもし体内にウイルスが侵入してきたとしたら、我々は一体どうすればインフルエンザの発症を防ぐことができるのでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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