米国仮出願の拡大先願の地位(第3回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国仮出願の拡大先願の地位(第3回)

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米国仮出願の拡大先願の地位(第3回)
~Secret Prior Art~

In re Giacomini, et al.,

 河野特許事務所 2010年10月15日 執筆者:弁理士  河野 英仁

4.CAFCの判断

後願排除効発生日は仮出願日である。
 CAFCは特許法の解釈、及び、最先の発明者にのみ特許を付与するという特許制度の趣旨に鑑み、後願排除効発生日は仮出願日であると判示した。

 原告はHilmer事件*5を根拠に、仮出願は後願排除効を有さないと主張した。Hilmer事件において出願人は、ドイツに第1国特許出願し、第1国特許出願に基づく優先権を主張して、米国に特許出願を行った。この際、後願排除効を有する日が、第1国特許出願日であるのか、米国の特許出願日であるのかが争点となった。

 Hilmer事件において原告は、米国特許法第119条(a)*6に「外国出願がされた最先の日から12 月以内に提出されることを条件として,同一の発明に関する特許出願が前記の外国において最初に提出された日に合衆国において提出された同一出願の場合と同じ効果を有する」と規定されていることを根拠に、後願排除効発生日も第1国特許出願日であると主張した。

 これに対しCAFCの前身であるCCPAは、米国特許法第102条(e)は、「合衆国において・・提出された特許出願」と規定していることから、合衆国外で提出された外国出願は適用対象外であり、パリ条約優先権を伴う米国出願の後願排除効日は、米国出願日であると判示した。

 CAFCは、Hilmer事件は基礎となる出願が外国出願であり、本事件は基礎となる出願が米国内の出願であることからHilmer事件を適用するのは妥当ではないと述べた。

 米国特許法第111条(b)(8)は、仮出願と本出願との関係について規定している。

 米国特許法第111条(b)(8)*7
 適用規定
特許出願に関する本法の規定は,他に別段の定めがある場合を除き,及び特許の仮出願は第115 条(出願人の宣誓),第131 条(出願審査),第135 条(インターフェアレンス)及び第157 条(法定発明登録)の適用を受けないことを除き,特許の仮出願に適用する


 CAFCは、本規定に基づけば、米国特許法第102条における「特許出願」は、仮出願と本出願との双方を含むと解釈できると述べた。

 また、1926年Milburn最高裁判決*8において判示された特許の基本的原則、すなわち「特許権者は最先の発明者でなければならない」という原則に鑑みれば、原告の発明日は、Tran仮出願よりも後であり、後の発明者に権利を付与すれば、当該原則に反することとなる。

 以上の理由から、CAFCは、先行するTran仮出願日が後願排除効発生日であると判示した。

                                                          (第4回へ続く)

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