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尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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PCBのリスクを過小評価してはいけない

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当コラムでもお伝えしていた、静岡県教育委員会のPCB廃棄物の誤廃棄の続報です。
※関連記事 PCB廃棄物を誤廃棄してしまった背景

産経ニュース 工場から基準値上回るPCB 静岡

静岡市の中学校で保管していたポリ塩化ビフェニル廃棄物(PCB)を含んだ機器が誤って廃棄処分された問題で、処理にか かわった工場の汚染状況を調査した同市教育委員会は26日、一時保管していた工場の一部から、廃棄物処理法で定められた基準値(1リットル当たり0・03 ミリ)を超えるPCBが検出されたと発表した。ただ、基準値を超えるものの微量で、工場近くの河川への流出や人体や環境への影響はない。

PCBは、敷地内の排水から油分を取り除くコンクリート製水槽型の装置内にたまった水から、1リットル当たり0・20ミリが検出された。工場の敷 地内で一時保管していた廃棄物から流れ出した液状のPCBが、排水と混ざって水槽に流れ込んだとみられ、市は汚染水を回収する方針。

 

おそらく、中間処理業者が設置していた油水分離槽に貯まった水を採取し、その水の中に、PCBが1リットル当たり0.2ミリグラム含まれていたということになるようです。

 

記事では、「河川への流出や人体や環境への影響はない」と言い切っていますが、その根拠となる測定値が、ミリグラムではなく、ミリですので、本当にそう思っているのか甚だ疑問です。

 

まず、「廃棄物処理法で定められた基準値(1リットル当たり0・03ミリ)」という基準の引用自体が間違いです。
この基準値は、(ミリじゃなくてミリグラムなのですが)ある産業廃棄物が、特別管理産業廃棄物であるか、特別管理産業廃棄物でないかを判別するための基準であり、「排水にPCBを混入させても良い限度」のような数値ではありません。

 

そもそも、1リットルあたりのPCB含有量ですので、大量の水を投入し分母を大きくする、つまり希釈されてしまえば、含有率はいくらでも下げられます。

 

また、油水分離槽は、排水中に含まれた油分を分離させ、油分分離後の水を排水するための設備です。
排水を保管し続ける設備ではなく、一定量の排水を流しつづけるための設備なのです。
事件発生が7月28日で、それから1月近く立った状態であるにもかかわらず、油水分離槽内にPCBが残っていたということは、それまでに相当大量のPCBが流出しているということになります。

 

PCBが環境中に拡散した今となっては取り返しがつきませんので、「周辺の土壌を全部改良せよ」などとは申しませんが

 

少なくとも、間違った基準で間違った説明を行うのではなく
正しい事実を、正しい基準に基づいて説明をする必要があるはずです。

 

水は川から海へと流れます。
そのため、水に流した汚れは、いつかは目の前から消えてなくなります。

 

しかし、だからといって、PCBなどが地球から消えうせてしまうわけではなく、
魚やプランクトンに吸収され、やがては人間のところにブーメランのように帰ってきます。