下請が自ら運搬できる建設廃棄物の条件 - 企業のコンプライアンス - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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下請が自ら運搬できる建設廃棄物の条件

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

※関連コラム ここが変わった廃棄物処理法 第21条の3第3項

 

第13回廃棄物処理制度専門委員会」において、改正法の条文からはわからなかった、政省令の詳細案が明らかにされました。

上記の委員会では、「帳簿の作成対象事業所の拡大」や「産業廃棄物収集運搬手続きの合理化」など、様々な論点が挙げられていましたが、今回は、多くの方が注目しているであろう「建設廃棄物を下請が運搬する際の取扱い」について解説します。

専門委員会では、環境省から、下請が産業廃棄物収集運搬業の許可無しに、即ち「自ら運搬」できる廃棄物の条件として、施行令を次のように改正したいという提案がされました。

下請が排出事業者として自ら運搬できる廃棄物は、次のすべての条件に該当する場合のみとする

  1. 建築物に係る修繕維持工事(新築、増築、解体を除く)、又は工事完成引渡し後に工事の一環として行われる軽微な修繕工事で、請負代金が500万円以下の工事
  2. 特別管理産業廃棄物以外の廃棄物であること
  3. 1回に運搬する廃棄物の容積が1㎥以下であることが明確な廃棄物
  4. 積替えのための保管を行わないもの
  5. 運搬先が元請業者の指定する保管場所又は処理施設で、廃棄物が排出される現場と同一の都道府県内にあること
  6. 下請が自ら運搬する廃棄物の種類、性状及び量、廃棄物が排出された現場、及び運搬先、廃棄物の運搬を行う期間を具体的に記載した「別紙」(元請と下請の両方の押印が必要)と、「請負契約の写し」を携行すること
    ※瑕疵補修工事の場合は、建築物その他の工作物の引渡しがなされた事実を確認できる資料も必要

というものでした。

ご覧いただくとわかるように、工作物の維持修繕工事などの場合にしか認められない条件となっていますので、世の中のすべての建設会社が恩恵を受けられるわけではありません。

事実上、「3」の条件にあるとおり、フレコンパック1袋分(1立方メートル)という、非常に少量の廃棄物をささやかに運ぶような場合しか想定していません。

現行案のまま施行令が改正されると、実務上大きな混乱が予想される条件としては、「5」と「6」に注意が必要です。

専門委員会でも、建設業界の委員から苦言が呈されていましたが、「5」の建設現場と同一の都道府県の保管場所か処理施設に運搬する場合に限るという 制約をしてしまうと、県境のぎりぎりの場所で工事をしている場合、例えば東京都の江戸川区で工事をしているような場合は、隣県の千葉県で保管をした方が効 率的な場合が多いのに、それが(収集運搬業の許可無しに)できないということになります。

環境省はこの条件を、「都道府県の監視の実効性を担保するため」と説明し、変更するつもりが無いと回答しましたが、まったく意味不明な論理です(笑)。

東京都と千葉県の間には関所や壁があるわけではないので、無理矢理行政管轄で分類する意味は本来ありません。
千葉県に東京都の現場で発生した廃棄物が流入することに何の問題があるのでしょうか?
(実際のところは、千葉県はそれを問題視し、流入規制をしていますが・・・)
注:あくまでも、廃棄物を自ら運搬する場合に限っての話で、収集運搬業の許可が無意味だと言っているのではありません。

同一の都道府県内に限るという条件は、現実無視の机上の空理空論に過ぎません。

不適切な保管や流入を防ぎたいのであれば、「発生場所から30km内の距離にある保管場所に限る」など、少量の廃棄物を運搬するのに無理がない範囲を指定する方が実効的です。

「6」の「保管場所等を記載した別紙」や「請負契約の写し」の携行という条件も厳しすぎます。

産業廃棄物の収集運搬車両には、委託契約書の写しの携行を義務付けていないのに、自ら運搬には、「請負契約の写し」の携行を義務付けるというのはアンバランスです。

これでは規制緩和ではなく、純然たる規制強化です。

環境省にそのような意図は無いのかもしれませんが、現実的に非常に使いにくい条件をわざわざ設定し、法律違反を増やそうとしているように感じられます。

これから、8月下旬から9月上旬にかけて、政省令の改正に関するパブリックコメントが募集されるそうですので、関係する業界の方は一致団結してコメントを提出する必要がありそうです。

色々な意味で、2010年の廃棄物処理法改正は、実務や日本の廃棄物処理制度に大きな影響を与えることになりそうです。