ESTA渡航認証で入国拒否となる「不道徳な行為に関わる違法行為」 - 海外在留資格・外国ビザ申請 - 専門家プロファイル

今林 浩一郎
今林国際法務行政書士事務所 代表者
東京都
行政書士

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対象:海外留学・外国文化

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ESTA渡航認証で入国拒否となる「不道徳な行為に関わる違法行為」

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日本は、米国のビザ免除プログラムの対象国になっています。したがって、日本人は、原則的に米国に入国するためにビザ(査証)を取得する必要はありません。しかしながら、米国はテロ防止対策の強化から入国審査基準を厳格化しており、ESTA(Electronic System for Travel Authorization)渡航認証というシステムを導入しています。米国大使館のウェブサイトは、ESTA(渡航認証)に関し、「ビザ免除プログラムに基づく米国への渡航の安全を強化するために、ビザなしの渡航の要求基準が強化されました。ビザ免除プログラムが適用される国の国民は、まだビザなしで旅行する資格がありますが、米国に渡航する前に渡航認証を取得する必要があります」と説明しています(ただし、カナダ市民は、ESTA(渡航認証)を事前取得する必要はありません)。

 

ところで、このESTA渡航認証の質問B) に「これまでに不道徳な行為に関わる違法行為あるいは規制薬物に関する違反を犯し逮捕されたこと、あるいは有罪判決を受けたことがありますか?」“Have you ever been arrested or convicted for an offense or crime involving moral turpitude or a violation related to a controlled substance”という質問があります。ここで「不道徳な行為に関わる違法行為」“an offense or crime involving moral turpitude”には具体的にはどのような行為が含まれるかが問題となります。

 

以前は“an offense or crime involving moral turpitude”は、「破廉恥罪」と訳されていました。この点に関し、小学館の日本大百科全書は「破廉恥な動機により犯される犯罪。殺人、強窃盗、放火などの罪が一般にこれにあたる。破廉恥な動機とは、道徳的または倫理的に非難されるべき動機をいうものと解されている。これに対して、非破廉恥的な動機による場合を『非破廉恥罪』という。日本の刑法は両者の区別を明確にはしていないが、刑罰の面から自由刑を懲役刑と禁錮刑とに区別しているところから、両者の区別を前提としているものと解されている」と解説します。もっとも、これは日本の刑法に関する理解であり、“an offense or crime involving moral turpitude”は、コモンロー(すなわち、英米法)上の定義に従って解釈する必要があります。

 

この点に関し、米国の議会図書館資料は、“Whether a crime involves moral turpitude has been determined by judicial and administrative case law rather than a statutory definition. In general, if a crime manifests an element of baseness or depravity under current mores — if it evidences an evil or predatory intent — it involves moral turpitude. Thus, certain crimes such as murder, rape, blackmail, or fraud, have been considered crimes involving moral turpitude, whereas crimes such as simple assault have not been considered to involve moral turpitude”(Immigration Consequences of Criminal Activity; Michael John Garcia and Larry M. Eig, Legislative Attorneys, American Law Division).「ある犯罪が破廉恥性に関わるかどうかは、制定法上の定義よりもむしろ司法判例(法)や行政事例(法)により決められてきた。一般に、ある犯罪が、現在の道徳規範の下に卑劣性又は堕落性の要素を示す場合(仮に当該犯罪が悪質な又は快楽的な意図を証明するものであれば)、当該犯罪は、破廉恥性に関わる。したがって、殺人、強姦、恐喝又は詐欺などの特定犯罪は、破廉恥性に関わる犯罪とみなされ、一方、単純暴行などの犯罪は、破廉恥性に関わる犯罪とみなされなかった」と“an offense or crime involving moral turpitude”(破廉恥罪)の該当性判断基準を示します。

 

同様に、「米国国務省外交マニュアル第9分冊・査証」(U.S. Department of State Foreign Affairs Manual Volume 9 – Visas)は、“moral turpitude”の解釈の指針に関し、“The most common elements involving moral turpitude are: (1) Fraud; (2) Larceny; and (3) Intent to harm persons or thing.”「破廉恥性に関わる最も一般的な要素は、(1)詐欺、(2)窃盗、(3)人や物を害する故意である」との解釈基準を示します。同時に、同米国国務省外交マニュアルのリストは、破廉恥罪(不道徳な行為に関わる違法行為)の具体例として以下の犯罪を列挙します(典型例のみ訳出、その他の一部犯罪は省略)。「1、(破廉恥罪に該当する)財産罪 放火、恐喝、(住居侵入窃盗等他の犯罪目的を伴う)住居侵入、横領、文書偽造、詐欺、(故意の)器物損壊、窃盗、強盗、(故意の)盗品譲受、(故意の)盗品運搬、2、(破廉恥罪に該当しない)財産罪 (他の犯罪目的を伴わない)住居及び建造物侵入、(故意によらない)器物損壊、(故意によらない)盗品譲受、(故意によらない)盗品運搬、3、(破廉恥罪に該当する)国家に対する罪 贈収賄、通貨偽造、国家に対する詐欺、偽証、犯人隠避・蔵匿、(故意の)脱税、4、(破廉恥罪に該当しない)国家に対する罪 (刑務所等からの)逃走、飲酒運転、無謀運転、虚偽供述(偽証又は詐欺に該当しない場合)、非合法賭博、非合法武器所持、移民法違反、富籤罪、軽い交通違反、強盗予備罪、密輸、浮浪罪(日本では軽犯罪法違反)、5、(破廉恥罪に該当する)個人、家族関係及び性道徳に関する罪 

幼児遺棄、悪質な暴行(殺人、強姦、強盗及び重大な傷害の意図を有する場合並びに危険又は致死的な武器を手段とする場合)、重婚、わいせつ行為(強制わいせつ、わいせつ文書頒布及び公然わいせつ等を含む)、誘拐、殺人、(暴行による)傷害、売春斡旋、売春及び強姦、6、(破廉恥罪に該当しない)個人、家族関係及び性道徳に関する罪、単純暴行、業務妨害(暴行又は脅迫を手段とする場合を除く)、過失致死、名誉毀損、騒擾(日本の騒擾罪とは構成要件が異なり、ばか騒ぎの類)。なお、“moral turpitude”に該当する犯罪の未遂及び共謀も“moral turpitude”に該当します。そして、以上に該当する場合には、米国への入国が拒否される理由になります。

 

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