- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:税務・確定申告
- 平 仁
- (税理士)
税理士が日常業務でクライアントにちゃんとした指導をしていないから
税務訴訟なんかが起きるんだ、との考えを持たれている税理士も多いことと
思いますが、そう考える税理士さんに是非読んで頂きたい本があります。
木山泰嗣「税務訴訟の法律実務」弘文堂(2010年7月刊)
税務訴訟に強い数少ないローファームである鳥飼総合法律事務所に所属する
新進気鋭の弁護士が書いた本書は、税務訴訟に関する手続きを内容とする
ものなので、税務訴訟に関わりを持たない税理士にとっては直接必要がない
かもしれませんが、本書363ページ「税務訴訟の社会的役割」において
書かれた以下の言葉をぜひ問題意識として持って頂きたいのですね。
「こうした税務訴訟に対する司法のチェックの担い手が、直接的には司法権を
行使する裁判所(地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所)であったとしても、
肝心なことを忘れてはならない。
それは、「訴えなければ裁判なし」という民事訴訟の大原則である。つまり、
いかに裁判所が課税処分の適否をチェックしようと意気込んでいたとしても、
肝心の訴え提起がなければ、裁判所は自らその課税処分の適否を審査する
ことはできないのである。税務訴訟の発動を握っているのは、税務訴訟を
提起する際に訴訟代理人となる弁護士であり、補佐人となる税理士である。
弁護士・税理士が、税務行政に対する司法のチェックを求めるべき事件
であるか否かを判断し(もちろん、最終的には当該事件の当事者である
納税者原告の意思にかかっているはいるが、専門的見地からアドバイスをし、
税務訴訟を提起できるのは税務訴訟専門の弁護士であり、税理士である)、
YESとなったときに、初めて、裁判所に課税処分取消訴訟の「訴状」が
提出されるのである。これは当事者意思を尊重する処分権主義の現れである。
税務訴訟を提起した後においても、判断するのが裁判所であるといっても、
判断の材料となる証拠を収集・提出し、主張を提示するのは、やはり弁護士
であり税理士である。これも当事者意思を尊重する弁論主義の現れであり、
代理し、補佐する専門家の手腕にかかっている分野といえる。
税務訴訟が、税務行政に対する司法のチェックの場面であり、その担い手が
司法権を行使する裁判所であるといっても、実際にその税務訴訟を裁判所に
持ち込み、事件を発動させ、かつ、真実を明らかにするために多くの証拠を
提出し、当事者の主張を整理し提示するのは、税務訴訟の専門家である
弁護士であり、税理士である。」(363ページ)
「しかしながら、弁護士は税法に精通していない者が多いし、税理士は
訴訟法に精通していない者が多い。税務訴訟の専門家の数は、ごく少数の
弁護士・税理士にとどまっているというのが、残念ながら、現在の日本の
税務訴訟の実情である。」(364ページ)
だからこそ、税務の現場にいる税理士が税務訴訟を学ぶことが必要なんです。
このコラムに類似したコラム
成年後見人等養成研修に参加! 菅原 茂夫 - 税理士(2012/11/28 12:37)
弁護士会活動等の交際費該当性(東高H24.9.19) 平 仁 - 税理士(2012/10/26 11:20)
TPPと税理士制度 三瀬 宏太 - 税理士(2012/01/04 18:43)
不利益遡及立法事件、最高裁で敗訴 平 仁 - 税理士(2011/10/13 15:16)
税理士はつけとく方が無難かも 高橋 昌也 - 税理士(2011/06/26 09:05)