(続き)・・さてそのような生活習慣の乱れやストレスと並んで、職場に於ける病気や体調不良の増加の原因となっているものに、「オフィス環境」の悪化が挙げられます。前二者については世の中の関心が比較的高く、それなりに対策も進められてきていますが、オフィス環境に関しては住環境とともに未だ世間の認識が低く、対策も充分に取られているとはいえないのが現状です。
オフィス環境から人間が受ける影響というものは、我々が考える以上に大きなものがあります。例えばある社員が別の職場から移ってきて間もなく、冷え性や自律神経失調、ぜんそくなどの症状に見舞われたり、逆に別の職場に移ったら改善した、などという話はよく聞きます。さらには或る会社が新築のビルに移転した途端に多くの社員がうつ病や慢性疲労に襲われ、おかしいと気付いて元の古い職場に戻ったら社員がみな健康を取り戻した、といった俄かには信じられないような話もあります。
およそ我々人間の体や心といったものは単独で存在している訳ではなく、周囲の環境と常に関係性を持ちながら存在し活動しているのです。人間の体や心という「内なる環境」と、人間の周囲にある建物や外気、土壌といった「外なる環境」とは、決して隔絶されたものではなく、互いに密接に関与し合い、一つの融合した世界を形成しています。例えば人間は誰でも呼吸をしますが、それによって肺内の空気と周囲の外気が混じり合い、外気の状態が直接、我々の体内の状況に影響を与えるのです。
環境の我々に与える影響の大きさを物語る例で、よく引き合いに出されるのが犯罪対策です。1980年代まで、ニューヨークは年間2千件以上の殺人事件が発生する世界一の犯罪都市でした。しかし90年代以降、急速に犯罪は減少し、凶悪犯罪は半分以下に減りました。それは警察や市民団体を中心とした徹底的な環境改善が奏功したのが最大の要因といわれております。すなわち地下鉄の落書きや割れた窓ガラスの除去、無賃乗車の取り締まりなどを通して、「犯罪の起こりにくい環境」を根気よく作り上げたのです。
また環境は医療現場でも注目され始めています。病院の建物というと、壁が真っ白で冷たい印象を与えますが、これをオレンジ色などの暖色系にし、またランプの光や装飾品などを工夫して暖かい配色にしたところ、手術後の患者の痛みが明らかに軽減し、また入院日数が短縮できたという報告があります。一方学校でも、校舎の壁色やランプを明るい色に変えただけで、不登校や校内暴力が減少して生徒の平均成績も向上した、と伝えられています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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