- 佐山 希人
- 佐山建築研究所 一級建築士事務所 代表取締役所長
- 建築家
対象:住宅設計・構造
これは建築家活動を始めた当時に新築した築14年目の我が家の改修記録である。
18年前。サラリーマンに終止符を打ち自分の手足で生きていこうと決めた。北海道の山の中で生まれ、東京で大学を卒業就職。帰るつもりはなかった。真剣に八丈島に移住し漁師になろうとも考えた。しかし、非現実的でそれまで経験してきた建築畑を捨て去れなかった。ならば、自分の嗅覚で生きてゆく場所をさがすのみ。海のそば、山のヨコ。東京都縁が切れない田舎。葉山が良さそうだと嗅覚が反応した。(関連記事…http://vivid-style.com/archives/1996/03/no8.html)
住んで仕事を始めてみると嗅覚に間違いがなかったことを確信する。東京へはドアツードアで1時間。時間があれば海へ。仕事と遊びが一体となる。生活が生き活きし始めた。根を下ろすことを真剣に考え土地探しを始める。アンテナの感度を上げて3年ほど。日課の新聞折り込みを見ると「海一望」が飛び込んできた。15分後には現地に立っていた。ヨコの山にはい上がり、2階からの眺望、3階からの眺望を確認。その足で、売り主に指し値に行く。縁があったのか、売値の1/5ほどの指し値に応じてくれて、根を下ろす場所が確定したのだ。銀行融資の関係もあって、1週間でプランをまとめ、1ヶ月後には確認申請をおろすことになる。2世帯住宅の施主は、妻と両親。ざっくりと要望を聞くふりをして、がつんと私一人で決めた。工務店が頓挫するなどの困難を乗り越え、2年がかりで竣工にこぎ着けた。
そんな面白い大困難を乗り越え、今のすまいに住み始めて早14年。建築に通じている人は一様にして言う。「木造ですよね。屋上菜園大丈夫ですか?」「北海道のM型屋根にヒントをもらってるので、全く問題なし!」と私。私世帯と親世帯は別棟になっており海に向かってハの字に開いて立っている。そのハの字を2階でつないでいる。今ではその連結部分で仕事をしているのだが、大きな計画上のヒントを教えてくれた。海風と山風がそのハの字の中を通り抜け夏でも寒いくらいなのだ。結果として葉山の特性が生きる結果となった。1週間の集中プランニングは成功したのだ。(関連記事…http://vivid-style.com/archives/2009/05/orifice-ecology.html)しかし、築14年も経つと、外部にくたびれ感が出てくる。特に夜露があたる木部は劣化し、外壁も美容的によろしくなくなってきていた。思い切って、木部の全面改修と外壁の補修に踏み切ることにした。すまいは長期にわたって巨費を投資する財産でもある。少なくともローンの期間の2倍くらいはシャキッとしていてほしい。しかし、補修を重ねてこそ長持ちするもの。伊勢神宮だって20年に一度は大改修をやるのだ。まだまだ、葉山に流れ着いて18年。根を下ろし始めたばかり。すまいをリフレッシュさせて、ますます建築活動と生活を生き活きさせていきたい。
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