(続き・・)ところで会社は大勢の人が集まる組織であり、一人ひとりの能力では及ばない要素を持っています。個々の社員の能力は高くとも、それが組織となるとパフォーマンスが充分に発揮できず、業績が低迷したり、心の病にかかる社員が続出したりします。最悪の場合には組織に不祥事や深刻なトラブルが発生し、瓦解に追い込まれます。その悲劇を防ぎ、会社組織のパフォーマンスを最大に発揮させるためには、個人間のコミュニケーションだけでなく、組織特有のコミュニケーションの特徴を見極め、絶えず改良していく必要があります。
上記の上司、部下を中心とするコミュニケーション法によって、確かに部下のやる気は向上し、職場内には会話が増えることは確かです。部署や会社全体の業績も向上する確率が高くなるでしょう。ただし、それは組織が「健全」である場合の話です。もし部署や会社の組織が病んでいて、それはもはやリーダーや個人の力量を超えているとしたら・・。その場合は、社員個人のやる気を高めたり、コミュニケーションの量を単に増やすといった方法だけでは追いつきません。個人の能力を向上させる以前に、先ずは組織の体質を健全にしなければならないのです。
企業組織がそのような状態に陥る原因は何でしょうか?それは個々のスキルだけでは解決しない、「組織全体がもつ思考パターン」にその本質があるのです。これは一般に「企業風土」とも言い換えることができます。この思考パターンは往々にして社員の能力を阻害し、組織を衰退させます。人がインフルエンザにかかるように、企業もいわば「組織病」という病気におかされてしまうのです。それでは人間の集合体である企業組織は、なぜそのような病におかされてしまうのでしょうか。
それには人間の、集団に於ける群集心理を理解する必要があります。人間には元々「周りの人から認められたい」「周りに良い影響を与えたい」「いい仕事をしたい」「社会に貢献したい」といったポジティブな心理があります。その一方で「人の成功を喜べない」「人前で失敗したくない」「人から嫌われたくない」といったネガティブな心理もあり、その両者がせめぎ合いながら日々活動しています。どちらの心理が優勢になるかはその状況によって変化し、ある程度は自分でコントロールすることが可能です。
これが集団となると話が少々複雑になります。元々集団にはいろいろな心理状態の人が存在するため、そこにはポジティブ心理とネガティブ心理が入り乱れています。この両者のどちらが優勢になるかはその時々の情勢によって異なりますが、どういう訳か集団に於いては、ネガティブな心理が優勢となりやすい傾向があります。よほど集団が上り調子の時や幸運が重なった時でもない限り、ネガティブ心理がポジティブ心理をかき消してしまうかのようです。従って常々注意して軌道修正していかないと、組織全体がネガティブ心理に占領されてしまいかねないのです。
このようなネガティブ心理が生まれやすい状況の一つとして、構成員が過去にその組織に於いて心理的なトラウマを受けた場合が考えられます。つまり自分のポジティブ心理に基づく建設的な行動に出たものの、周囲のネガティブ心理に基づく否定的もそくは批判的な対応を受けた場合です。具体的には、組織が良くなることを願ってプランを提案したものの、逆に提案すること自体を拒否された場合があります。その結果、自己防衛という心理が働いて、二度と提案などするものかと考えたり、代償行為という心理によって、今度は別の社員の提案を真っ向から否定する、といったネガティブな行為に出るのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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