(続き)・・さてそのような悪い癖を早期に発見し、早期に退治させるためには、何をすべきなのでしょうか。一番必要なのは部下からの「フィードバック」です。先ずは自分の考え方と行動を改め、部下に協力してもらえるような努力が必要なのです。人間には上記のような思考の枠があるため自分一人だけでは限界があります。部下も含めた周囲の協力を仰ぎ、耳の痛いことでも進んで聞き入れることが何より求められます。そうすることによって部下は「上司が本気で変わろうとしている。自分も変わろう!」と自然に思えてくるものです。
フィードバックとは、自分の言動が周囲のメンバーからどう見られているか、をメンバーから教えてもらうことです。それによって自分が周囲に与えている良い影響と悪い影響を知ることができ、対人関係を改善する糸口を見出すことができます。ただし部下にとっては、上司の悪い点を上司自身に知らせるのには心理的な抵抗があるものですが、そこで予め上司が部下に「何でも正直に言ってくれ」と伝え、本気度を示して安心感を与えることが重要です。また正直にフィードバックしてくれた部下に対しては感謝の意を表することも大切です。
次の段階ですべきなのはメンバーへの「謝罪」です。フィードバックしてもらった情報をもとに、一番問題となっている自分の言動についてメンバーに対して「申し訳ありませんでした。これからはもっと良くなるように努力します。」と謝るのです。上司が面と向かって謝罪してくれば、部下にとっては上司が本気で変わろうとしている、と感じられるものです。謝罪することは自分のプライドを傷つけるのでは、という不安があるかも知れませんが、実際に謝ってみるとそのようなことはなく、むしろすがすがしい気分になるから不思議です。
続いてメンバーに対し、自分が「変わる」と公言します。例えば「自分には人の話を聞かない癖があるから、それを変える」と宣言するのです。そうすることによって、部下は上司の変化に関心をもち注目します。それをみて上司は退路を断たれ、本気で自己改革をせざるを得ません。また部下も本気になった上司をみて、今度は自分も自己改革をしようという気になるのです。そうなると部署全体の雰囲気は劇的に良くなり、お互いがお互いを高めようとするエネルギーに満ちあふれた、活気のある職場に変貌します。
さらに部下も含めたメンバーに対しアドバイスを求めます。上司からアドバイスを求められてイヤな気分になる人は誰もいません。どんなアドバイスにも黙って耳を傾けてメモをとります。つい口を挟みたくなることもありますが、素直に聞くことに徹します。それによって部下は、自分の意見が尊重されていると感じてモチベーションが上がります。またその後も定期的に意見を求め、もし初心を忘れて悪い癖が再発した場合には、直ぐにフィードバックしてもらうようにしておきます・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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