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河野 英仁
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ビジネス関連発明の特許性(第5回)

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ビジネス関連発明の特許性

~人民法院による特許性の判断~ (第5回)

Micro Motion Inc.,(米国)
原告
v.
知識産権局復審委員会
被告

河野特許事務所 2010年7月29日 執筆者:弁理士  河野 英仁

5.結論
 中級人民法院は、専利法第2条第2項にいう「技術案」に該当しないとした復審委員会の決定を支持する判決をなした。


6.コメント
(1)中国でのCS・BM関連発明権利取得時の注意点
 技術三要素に基づく判断は中国独特のものであり、他国の判断基準と比較すれば非常に厳しい要件を課しているといえる。CS・BM関連発明を出願する場合,商業的課題を主張することなく,技術手段を利用して,技術的課題を解決しつつ暗に商業的課題を解決できる請求項及び明細書を書き上げる能力が要求される。

 技術手段によって商業的課題を解決できるか否かは,客観的なことであり,明細書に商業的課題を記載する必要はない。むしろ商業的な課題を記載すれば,専利法第2 条第2 項に基づく拒絶理由に直結することから,かかる記載は控えることが必須である。特にパリルートで中国に特許出願を行う場合,原日本明細書を見直す機会がある。

 その際,クレーム,解決課題,及び発明の効果欄について,商業に関連する記載を全て削除し,技術的側面がより顕在化された記載に全面的に見直すことが必要である。さもなければ審査官から技術三要素に基づく拒絶を頂戴するのは火を見るよりも明らかであり,かかる拒絶理由を後に克服するのは至難の業だからである。

(2)他国との対比
 本事件における出願人は、中国のみならず米国、欧州及び日本に対応する発明を特許出願しているところが興味深い。筆者はこれらファミリー特許出願の各国における審査過程を調査した。参考図3は結果一覧表である。

国名 願番/特許番号 法上の発明 記載要件/進歩性 特許
中国 00807781.9 × 判断せず ×(拒絶維持判決)
米国 USP6,173,214 ○(拒絶無し)
欧州 EP1190351 ○(拒絶無し)
日本 特願2000-607130号 × ×(拒絶審決)

参考図3 結果一覧表 ○:具備  ×:具備せず

(i)米国
 米国では同様の請求項について拒絶理由を受けることなく特許が成立している。米国連邦巡回控訴裁判所が判示した機械-変換テスト*6を用いて特許性について分析すると、請求項1に係る方法発明は物資運送システム及び流量計というハードウェアに実装されており、かつ、当該ハードウェアの使用は権利範囲に意味のある制限を加えているといえ、米国特許法第101条*7の要件を具備するといえる。

(ii)欧州
 欧州においても同様に拒絶理由を受けることなく特許が成立している。発明の成立性を規定する欧州特許付与に関する条約第52条*8に基づく拒絶理由は通知されていない。

                                (第6回へ続く)

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