裁判員裁判で量刑不当による控訴は許されるのか?
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2009-08-07 15:30
7日8時5分産経新聞記事はこう報じた。
裁判員裁判で下された懲役15年という判決を受け、弁護側は「量刑も
厳しく、被告もわれわれも主張が認められず不満だ」と、控訴を視野に
入れていることを示唆した。
裁判員裁判の判決後、控訴された場合、どうなるのか。
控訴期限は通常の刑事裁判と同様、14日以内だ。
検察側、弁護側が控訴すると、高裁での審理となる。
高裁は通常の刑事裁判と同様に、裁判員が加わることはない。
国民が審理に参加し、その社会常識や経験が反映された1審の裁判員裁判の
判決を、プロの法律家だけが審理に参加する控訴審で破棄や差し戻しが
できるかについては、関係者らの間で議論となってきた。
最高裁の司法研修所は裁判員裁判の1審判決について、「できる限り尊重
すべきだ」とした研究報告書を公表。
その後、東京高裁の刑事部部総括裁判官研究会は判例雑誌に発表した見解で、
おおむね最高裁の見方を支持した。
検察側の控訴についても、元検事の弁護士は「被害者や遺族の意向は
無視できないが、検察としては裁判員が出した量刑を重視し、量刑不当での
控訴は制限すべきだろう」と話す。
裁判員制度の問題点として今後の課題とされることに、控訴された場合の
対応がどうなるのかが残されている。
私見としては、記事と同様、裁判員制度の趣旨から考えれば、量刑不当
による控訴は認められるべきではないと考えている。
もし、量刑不当による控訴を認めるとなると、原告、被告双方に控訴を
認めるべきであるから、裁判員制度に基づく量刑判断を検察が否定することが
許されることになり、裁判員制度の導入目的に反することになろう。
ただ、被告にだけ控訴を認めるという妥協策はあり得ようが、控訴権を
一方当事者にしか認めないとすれば、訴訟法における理論的整合性が
図れなくなり、不合理である。
だからこそ、私見としては、量刑不当による控訴を否定するのだ。
しかし、これには、裁判制度が三審制であることを真っ向から否定するだけに、
異論が出てくるのは当然であろう。
この点をどのように理論的な整合性を整えていくのか、注目されるところである。