- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
A君に対する証人尋問で、裁判官はA君に対して、「赤信号で渡って事故に遭ったって言うと、お母さんや、お父さんとか、幼稚園の先生なんかに怒られるから、青で渡ったと言ってるんじゃないの?」とか、「青信号で渡ったことは絶対に間違いないの」などと何度も確認をしたのです。この事故においてA君が置かれた立場を考えると、仮に赤信号で渡ったのが事実だとしても、そう簡単には事実を認められるものではありません。それにもかかわらずこのような質問をする裁判官は、私には、善意ではあるが全く人間存在に対する理解がないか、あるいはA君の立場など百も承知であえて被告人に不利な証言を固めさせるために質問しているようにしか見えませんでした。
その後の公判で検察官は、Hさんが横断を始める直前にその前を通過した大型車がF運転手のダンプカーだったことを認めたものの、なお青信号で渡ったというA君の証言は信用できるとして、F運転手の過失の存在を主張しました。そして一審判決は検察官の主張を基本的に認め、A君の証言は信用できるとした上でF運転手の過失を認め、F運転手に禁錮1年4月の実刑判決を言い渡しました。
私もF運転手もこの判決にはとても承服できず、控訴を申立てることにしました。
(次回に続く)