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対象:特許・商標・著作権
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中国におけるコンピュータ・ソフトウェア及びビジネス方法関連発明の特許性
〜審決及び判例に基づく特許性の分析〜(第8回)
河野特許事務所 2010年6月10日 河野 英仁、聶 寧楽
3.復審委員会の判断
以下,復審委員会がなした審決2 件を紹介する。
(1)
セガ事件
(i)セガ事件の概要
日本の株式会社セガ・エンタープライゼス(以下,請求人という)は中国知識産権局に「プログラム実行装置のプログラム実行の制御方法」と称する発明特許出願(出願番号95102738.7,以下
738 出願という)を行った。
審査においては現有技術との間の区別的な特徴(日本実務における「相違点」に相当)は商業手段に該当し,創造性を欠くとして拒絶査定となった。出願人は拒絶査定を不服として復審委員会へ審判請求を行った。復審委員会は,本願請求項と現有技術との間の区別的な特徴は技術的課題を解決する技術手段に該当し,創造性を有するとの決定8)をなした。詳細な経緯は以下のとおりである。
1995 年2 月20 日:中国特許出願
2004 年5 月14 日:知識産権局実質審査部門
(以下,審査部門という):専利法第22 条第3 項(創造性)の規定に反するとして拒絶査定
2004 年8 月30 日:復審委員会へ審判請求
2005 年12 月6 日:復審委員会は審査部門がなした拒絶査定を取り消す審決
(ii)738 出願の内容及び現有技術との対比
請求項1の内容は以下のとおりである。また図2 は対応日本出願の代表図である。
【請求項1】アプリケーションプログラムと発売地域を示す発売地域情報とを格納した着脱自在な記憶ユニットを備えるプログラム実行装置に,プログラムの実行を制御する方法において,
前記記憶ユニットが装着される場合,前記プログラム実行装置のプロセッサは,
前記プログラム実行装置の不揮発性メモリに記憶したベーシックプログラムを実行し,
前記記憶ユニットから前記発売地域情報を読み出し,
前記プログラム実行装置の記憶手段に記憶された発売地域を示す発売地域情報と,前記読み出した発売地域情報とを比較し,
前記比較の結果に応じて,前記記憶ユニットに記憶されたアプリケーションプログラムとの実行可否を判定し,
実行可能と判定した場合,前記プロセッサと接続されている表示機及び入出力ユニットを介する操作によって,ゲームが開始されるための前記記憶ユニットのアプリケーションプログラムを実行し,
実行不能と判断した場合,前記記憶ユニットの前記アプリケーションプログラムを実行しないとともに,アプリケーションプログラムが実行できないことを前記表示機に表示する。
図2 対応日本出願の代表図
請求項1に係る発明は,記憶ユニットに,記憶ユニットの発売地域を示す地域情報を格納しておく。一方,プログラム実行装置本体には,本体の発売地域を示す地域情報を格納しておく。ソフトウェア実行時には,記憶ユニットの地域情報とプログラム実行装置本体の地域情報とが比較される。そうすると,プログラム実行装置本体の発売地域以外で発売された記憶ユニットは,当該プログラム実行装置本体上で動作できない。これにより第3 者が不当に利益を得ることを防止でき,開発会社,販売会社の利益を守ることができるという効果を奏する。
一方,現有技術として審査部門及び復審委員会に引用された引例CN1009970Bは,相対的に小さいアドレス空間にアクセス可能な中央処理ユニットを含むPC本体に対して着脱自在な,メモリーカートリッジを開示している。
(第9回に続く)
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